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手紙 ページ21

夕暮れ時、王都から離れたこの静かな地に、一頭の立派な馬が駆けてきた。

見れば誰でもわかる、王都からやってきた使いの者だ。

黒い(たてがみ)をなびかせ、場違いなほどに雄々しいその姿は、間違いなくAの家の使いの者で。



ぼんやりと窓の外を眺めていたAは、窓に張り付くようにしてそれを見ていた。

門番とのやり取りを見る限り、どうやら手紙らしいということがわかって、Aはもともと座っていた椅子に再び腰を落ち着けた。

この場に凛月がいたなら間違いなく笑われているが、彼は稽古の最中だった。


夕食後に凛月の手にそれらが渡された。届けられた手紙はすべて凛月宛だ。

そうだろう、既婚の女性のもとへ堂々と手紙を寄越す馬鹿な男はいない。父も名目上は凛月に宛てて書いてきている。その中に、Aに宛てた部分があるに違いない。

「あ、」
凛月が開封早々に少し苦い顔をした。

「俺、社交界とかパーティーとかほんと苦手なんだけど、義父様からの招待じゃ断れないし……」

どうやら、中に招待状が入っていたようだ。

お兄様の婚約パーティー。お兄様も、とうとう結婚なさるのね。

「ふふ、楽しみ」

「後ろの方はA宛てだから読みなよ」
凛月は他の手紙にも目を通すと、それだけ言い残してさっと部屋を去っていく。

お父様の手紙から読むことにした。

最近は王都も涼しくなってきたし、そちらはもう少し寒冷だと聞くから、体に気をつけるように、と。

お母様もAのことを心配しているし、お兄様が寂しがっている、などと書かれていて、Aはふっと笑った。

お父様の困り顔が浮かぶのだ。対して、お兄様の寂しがる様子は少し想像がつかない。

Aの実家の鳴上家は4人の兄弟姉妹だ。

いちばん上のお姉様はAより8つ年上で、もちろん、地位ある家のご子息と既に結婚されていて、子供が2人。

物語の王子様みたいに凛々しくて、Aの憧れのお姉様だ。

2番目は長男であるお兄様。Aより6つ年上で、背が高くて見た目はかっこいいのに、お酒を飲むのと鏡を見るのが大好き。

Aのことをよくからかってくる。

いちばん年の近いのが、『お姉ちゃん』である鳴上嵐。

お姉ちゃんと呼んでいるけれど、Aの知るどんな女性よりサバザバとしていてとっても優しい。

立派な騎士として日々トレーニングを欠かさない努力家でもある。

   〃   →←蝶



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さなえ(プロフ) - フラッペさん» コメントありがとうございます。お褒めに預かり光栄です。細かいところにこだわって書いてみました。 (2018年8月18日 16時) (レス) id: b33fb32224 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - お話の内容が濃くて私的には面白い物語でした。こういう細かな文章が好きで、なんか一つ一つに感情がこもっているというか……まぁ、とにかく良い話でした。 (2018年8月16日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さなえ@Love伊織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeHome/  
作成日時:2017年7月29日 16時

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