160 僕を味わって。 ページ10
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二人無言で、段ボールから崩れ落ちた書類をしゃがんでかき集める。
結構…いや、かなり多い。集めては束ねて、段ボールに入れていく。ただひたすらに、静かに。
不思議な、時間だった。
膝をついて、うつむく何の色気もない冴えない姿は、
窓から射す光を全部集めたみたいに眩しくて、僕の目に焼き付く。
その左の薬指に戻された指輪が光に反射して、眩し過ぎるくらい刺さって、胸に焼き付く。
書類は段ボールにしまわれていく。
一枚一枚、バラバラに散らばった紙が減っていく分だけ、
僕達の距離は少しづつ近くなる。
胸が焦がされるみたいに熱い。
最後の一枚にお互いが近づいて、しゃがみこむAの手がその紙を拾う。
指輪の無い右手の、おそろいの傷がもう消えてしまっている手を…
僕は握った。
言葉はない、音もない時間。
静止したまま動くのを辞めて、時が動くのも辞めたような、薄暗いこの場所で、絡む視線に吸い込まれる。
やっぱりいつだって僕の全部を支配する。
手を引き寄せて、Aの顔に近づく。
僕達は、運命でも永遠でもなくて、
Aは決して、僕を選ばない。
ねぇ。なのにどうして…
嫌がる事なんてしない、
そのまま待っているように、
少しづつ目を閉じるAが
鬱陶しいくらい、欲しい。
ゆっくりと近づいて、その柔らかい唇に触れる。
お互い驚きもしない。
ただ、自然に脳がそうしたいと思った通りに動く。
全身を溶かすような、Aの生暖かさ。
甘くて苦くて僕が一番好きな、
止まらなくなる、味。
JM「駄目って、…言って」
A「駄目………だよ。」
JM「…隠れてするの、好きでしょ」
A「…………」
ねぇ、A。どうしてなの…
このままもっと、欲しくなるよ。
JM「どうして?」
A「………」
JM「意味わかるよね、答えて。」
A「これは、違っ…」
そう言ってダサいカーディガンをしめて、隠す。
JM「なんで。今日も、僕を誰よりも近くに感じたかったの…?」
カーディガンもズボンも眼鏡も全部、ジョングクが選んだ物に身を包むのに、その中に着ているクルーネックのトップスは…
僕が選んだ、僕の服だよね。
なんで、捨ててないの…
もう一度引き寄せて離れられないくらい深く強く、唇を重ねる。
もっと僕を味わって。
静かに、一番近くで。
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王様じゃんぷ(プロフ) - ぐうさん» 仕事の合間に聞いて泣いてみます💮5章も今から話が動くんで楽しんで下さいませ🌟また話しかけて下さい! (2022年11月2日 7時) (レス) id: 708020874a (このIDを非表示/違反報告)
ぐう - このお話すごい大好きです(՞ . .՞)♡このお話がすごい"paid paipar"の曲の歌詞がジミンとヒロインにマッチしていて泣けてきました笑 (2022年11月1日 22時) (レス) @page46 id: afc8ed882c (このIDを非表示/違反報告)
王様じゃんぷ(プロフ) - nnonnoさん» 嬉しくてスクショしました😭笑。モチベが落ちてたので本当に嬉しい🌈また来て下さい😭 (2022年10月27日 22時) (レス) id: 708020874a (このIDを非表示/違反報告)
nnonno(プロフ) - まるで映画を観てるような気持ちで読んでいます。作者様の表現力、言葉のチョイスすべて最高です。伏線の張り方も回収もプロですね!本当に読み応えのある作品でグクと主人公の奥深すぎる愛にも号泣しています。みんな幸せになって欲しい!更新楽しみにしています (2022年10月27日 9時) (レス) @page50 id: 498383e375 (このIDを非表示/違反報告)
王様じゃんぷ(プロフ) - 7neanooonさん» お疲れ様です😌💓5章で待ってまする🌈 (2022年10月17日 7時) (レス) id: 708020874a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:王様じゃんぷ | 作成日時:2022年9月1日 16時