仮面の下を見せてよ

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今日の撮影では私は進行と問読みをすると伊沢さんから聞いた。問読みは回答者全員にはっきり聞こえるように読まなくてはならない。だから今している発声は問読みの際に少しでも発音がクリアになるように、という練習だ。まあ緊張をほぐすというのもあるんだけどね。動画に出るのは初めてではないにしろ、やっぱり緊張する。

全ての音を発声し終わりふう、と一息をつくと背後から拍手が聞こえてきた。
発声をする前に誰もいないと確認したはずなのになんで。

びっくりして音がした方向へ振り向くと、そこには笑顔で拍手をしている山本さんがいた。

『なんでここにいるんですか…』

驚いて声が出ない中私が声を絞り出して聞くと山本さんはへへっとこちらに笑いかけた。

山本「通りすがりに見かけてつい、ね。もしかして、見られるの嫌だったかな…それだったらごめん！」

山本さんは申し訳なさそうに手を合わせている。

発声をしている姿を見られるのは初めてだ。誰かと一緒に発声をすることはあっても、基本私に意識を向ける人はいなかったから。

私は軽くため息をついて足元にある荷物を持ち上げ、山本さんに笑いかける。

『大丈夫です。ただ、誰かに見せたことは無かったので、少し恥ずかしくて。』

私の言葉を聞いた山本さんは「よかったぁ」とほっとしていた。

山本「Aちゃんもオフィスに行くの？」

『はい。』

山本「じゃあ、一緒に行こっか。」

そう言って山本さんは公園の出口へと歩き出す。私も慌ててそれを追いかけた。

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