*84 怒ってる ページ37
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『えっと、あの……江口さん?』
江口「……」
薄暗い玄関で、さらに下を俯いてるから表情が暗くてよく見えない。
見えないけど………
江口さんは、怒ってる。
『…ごめん、なさい』
江口「……」
『ごめんなさい、迷惑かけてしまって……江口さんにも、みんなにも………』
江口「……」
『怒ってますよね……本当にごめんなさ、』
何度目かの謝罪を口にしようとすると、江口さんにグッと抱き寄せられた。
ぎゅう、と宝物を包み込むかのように優しく抱きしめられる。
『江口さん……?』
江口「…違うでしょ」
『えっ…?』
江口「”ごめんなさい”より、先に言いたいことあるでしょ?」
少しだけ体を離して、私の目を真っ直ぐ見つめながらそう言われる。
その江口さんの優しい瞳と声に、私の中の糸がプツンと切れた。
『……こわ、かった…』
江口「…うん」
『一人でなんとかしなきゃって、迷惑かけちゃダメだって……でも、怖かった……っ』
江口「…うん」
ボロボロと涙が止まらない私を優しく抱きしめて、「頑張ったね」と頭を撫でてくれる。
なんでこの人は、こんなに私に優しくしてくれるんだろう。
さっきまでの恐怖が嘘みたいに解かされていく。
江口「…正直、怒ってる」
『っ……ごめんなさ、』
江口「違う。Aが怖い思いしてるのに早く気づいてあげられなかった自分に腹が立って仕方ない」
「1番近くで守ってあげなきゃいけなかったのに」と悔しそうに言いながら、私を抱きしめる腕に力が籠る。
そんな……江口さんは何も悪くないのに……
『……江口さん』
江口「なに…っ…」
私の呼びかけに反応した江口さんの襟を引っ張って、精一杯背伸びをしてその唇に自分の唇を押し当てる。
チュッ、とリップ音が鳴り、ゆっくり顔を離して江口さんの瞳を見つめる。
『助けにきてくれて、ありがとう』
江口「っ……」
『好きです、大好き』
江口「ッ……ほんと、さぁ…!」
『わっ…』
ボッ!と耳まで赤くなった江口さんに、ぎゅううう…と強く抱きしめられる。
照れてる江口さんは珍しくて、なんだか…すごく可愛い。
江口「……なに笑ってんの」
『可愛いなーって』
江口「あのねぇ、………」
『っひゃ…』
クスクス笑っていると、私の背中に回っていた江口さんの手が腰をスルリと撫でた。
江口「…俺ね、Aにも怒ってんの」
『えっ…わ、ちょ……っ』
江口「だから…………お仕置き」
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晴(プロフ) - 井戸さん» 同棲編はほんとに制限ギリギリまで責めようと思ってます(笑) よろしくお願いします!! (2020年4月22日 18時) (レス) id: 7dca284c0c (このIDを非表示/違反報告)
晴(プロフ) - 武田さん» お金は江口くん本人へ!!!(笑) ありがとうございます!!続編もよろしくお願いします!! (2020年4月22日 18時) (レス) id: 7dca284c0c (このIDを非表示/違反報告)
晴(プロフ) - 陽愛さん» こちらこそありがとうございますです!!!続編の方もよろしくお願いします!! (2020年4月22日 18時) (レス) id: 7dca284c0c (このIDを非表示/違反報告)
井戸 - 同棲編キタァァーー!!!ありがとうございます!! (2020年4月21日 10時) (レス) id: 1e21205b19 (このIDを非表示/違反報告)
武田(プロフ) - ウワーーーーーッ!!!!!続編!!!!!ウワーーーーーッ!!!!!ウワーーーーーッ!!!!!もう!どこに金払えばいいんですか!!!!!有難うございます!!!!! (2020年4月21日 1時) (レス) id: 784988d0c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はる | 作成日時:2020年3月29日 23時