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『藤ヶ谷さん…?』



彼女が出ていった扉を見つめ動かない彼



『あ、と、とりあえず座りましょ?』



なるべく明るい声を出して
彼の手を引いて宮田さんの元へ向かおうとしても
彼は動かなくて



『わりぃ、俺帰るわ』



聞いたことない口調と聞いたことない低い声で
そう呟いた彼は
私の手からスルリと抜けて
あの一瞬以外に私を見ること無くBARから出ていった



ああ、本当に散々だ

涙で前がよく見えないけれど
ポロポロと溢れる涙を拭うことすら出来なくて
完全に閉まった扉をただみつめていた



「橘ちゃん…」



心配そうにこちらを覗く宮田さん



『恨みっこなしってこういう事だったんですね』

『私が惨めな思いするからって事だったんですね』



ああもう嫌だ

結局私の味方なんて居ないんだ



「そうじゃないよ」

「でも、賭けではあったかもね」



そう呟く宮田さんは何を考えているのか分からないけど
私はこの恋の終焉を少しずつ考え始めていた

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作者名:ゆき | 作成日時:2023年6月18日 18時

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