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「藤ヶ谷の側に居ても傷付くだけじゃない?
ないそんなに居続けようとするの」
『私が藤ヶ谷さんのとばに居たいからです。
それに、藤ヶ谷さんに傷付けられたことなんて
ありませんし』
「へー、強がるんだ。
じゃあさ、なんでそんな泣きとそうな顔してるの?」
『そんな顔してない…っ』
この人と話していたら駄目だ
彼の優しい瞳と違う
力強い瞳に見透かされそうで怖かった
『も、もう行きます!』
だから逃げたんだ
北山さんの刺さるような視線から
BARの名前を確認して扉を開ける
扉のすぐそこに大好きな藤ヶ谷さんの背中を見つけて思わず腕に抱き付く
『ごめーんお待たせ』
「俺の質間に答える」
抱きついた私には見向きもしないでそう言う彼
初めてだった
こんなに低い彼の声も、こんなに怖い顔も
微かに震える彼の身体も…
全部、全部
私は知らない
━━━━━━━
「北山、橘さんを揶揄うのはやめとけ」
橘ちゃんがすごい勢いで出ていった後
閉まった扉を見つめていた俺に
マネージャーが声をかけた
『なんで?』
「なんでって…一応、あの子は真剣なんだよ」
『そうだね』
そんなの見ればわかる
橘ちゃんが藤ヶ谷にゾッコンなのも
藤ヶ谷の心が未だに例の彼女にあるのも
「俺たちは、藤ヶ谷の相手が橘さんだろうと、
例の彼女であろうと、あまり応援してあげられないんだ。
だからせめて、揶揄わないであげて欲しい」
『なんだ、マネージャーも例の彼女のこと知ってんだ』
「あんだけ千賀と宮田が、騒いでいたら嫌でも耳に入るわ」
『んまぁ、確かに』
彼女のことがマネージャーの耳にも入ってるのは
良いのか悪いのか
『でもさー、橘ちゃんなんか可愛いーんだもん』
「…グループ間での恋愛トラブルは勘弁だぞ…」
『へーきへーき』
藤ヶ谷さえハッキリすればトラブルなんて起こらないから大丈夫
『あ、コンちゃん。俺この後大倉とメシ行く約束から西麻布まで送って〜』
「…すぐそこじゃねえか、歩いてけ」
『生意気なマネージャーだな。俺はスーパーアイドルだからすぐの距離で気付かれたらどうすんだよ』
あまり納得していない様子のマネージャーだけど
車が発進したのを合図に俺はもう一眠りしよう
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作者名:ゆき | 作成日時:2023年6月18日 18時