Escape from Fate 4 (ページ23)

今日:40 hit、昨日:32 hit、合計:16,541 hit

3 ページ23

それから私たちは何度か逢瀬を重ねた

相変わらず、彼は私を見てくれないし
手を繋いで振り払われる事は無くても、
彼から繋いでくれることは無かった

それでも彼の近くに居られるだけで
私は幸せだった

そんな日々が続いたある日
初めて藤ヶ谷さんからのお誘いがあった

呼び出されたのは会員制のクラブで
受付で彼の名を伝えると個室に案内された

「橘ちゃんごめんね。急に呼び出しちゃって」

『いえ！藤ヶ谷さんの為なら地球の裏側に居ても駆けつけますから！』

「頼もしいね」

彼の瞳はいつも寂しげで
そんな彼を私が癒してあげようなんて
いつもは思っていたけど

今日の瞳は何の感情も読み取れなくて
少しだけ恐怖を感じる

そっと距離を詰めて座ってみると
肩と肩が触れる

彼の体温が熱くて、それで気付いた

『藤ヶ谷さんだいぶ酔ってます？』

「大丈夫だよ」

そう言う彼の顔はほんのり赤くて
潤んだ目に私まで熱くなる

『もー、お水飲みましょ。お水』

そう言ってグラスに伸ばした私の手を
彼はスっとすくい上げる

『藤ヶ谷さん？』

「今は何も開かないで」

とふわりと彼の体に包まれた時

私がずっと求めていた体温と
私の知らない表情で、何も考えられなかった
何も考えたくなかった

ただ彼にしがみついて
肩に感じる彼の悲しみを受け止めることしかできなかった

『落ち着きました？』

藤ヶ谷さんの腕の力が弱まった時
私からそっと離れる。

『何があったのかは、話したくなければ聞きません。
でも、私は藤ヶ谷さんが好きです。
大好きなんです。
藤ヶ谷さんのそばに届たいです』

彼の頬を挟んで目を合わせる

揺れている彼の目を見たくなくて
初めて彼と交わしたキスは、
少しだけしょっぽい味がした