番外編��キールと踊って 1 ページ21
『私、藤ヶ谷さんのこと本当に大好きなんです』
「ごめんね、今そういうの考えられないんだ」
何度目かの告白と何度目かの玉砕
何度かバラエティで共演しただけ
殆ど話したこと無かったけど
笑顔とか、スタッフさんへの対応とかを見て
素敵だなって思ったのがきっかけだったと思う
それなのに…
『こんなに本気になるなんて…』
「(人1)どうかしたのか？」
『ううん、なんでもないのお父さん』
とある制作会社の代表を務め
エンタメ業界では名を馳せる父
遅くに出来た子供なのと
母親が若くして亡くなっていることもあり
私のことを溺愛してくれている父
そんな父にこの気持ちを知られたら
どんな手を使ってでも私の思いを叶えようとするから
これは絶対に内緒
知られる訳には行かない
『このスタジオにいるのね？
少し挨拶してくる！』
中学生の時にモデルの世界に飛び込んで早10年
今は女優として着実に実力をつけていく傍ら
モデルとしても活動を続けている私
絡むことは無くても同じスタジオでの撮影っていうだけで
嬉しくなっちゃう
『あ、控え室見っけ』
コンコンとノックをしようとしたその時
「そうなんだよ！
ガールちゃん彼氏さんといたんだよ。
しかも超〜イケメン」
「え！やばいよガヤさん！ライバル出現じゃん」
「そんなんじゃねーし」
興奮したような口ぶりの宮田さんと千賀さんの声と
少し不機嫌なような藤ヶ谷さんの声
ガールちゃん…？
誰の話？
バンっと勢いよく扉が開いて外へ出てくる彼
急に開いた扉に驚く私には
全く気付かずに向こうへ行ってしまう
彼の顔を見て何も分からないほど鈍感じゃない
グッと拳を握りしめる
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作者名：ゆき | 作成日時：2023年6月18日 18時
