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そろそろ日付が変わる頃
不意にムクリと起き上がった彼が
うぅ…と頭を抱える
「あ!ガヤさん起きた?お水飲む?」
「あったまいてぇ…」
「ほらお水飲みなよ」
甲斐甲斐しく介抱される横で緊張が走る
覚えてても覚えてなくても彼の反応が怖かった
「A…?なんでお前が居るんだよ」
身体の震えが止まらなかった
声も瞳も震えてしまいそうで
『わ、私お手洗いお借りしますね!』
逃げた
鍵を閉めて項垂れる
鏡に映る自分は彼の事が好きで
収まれ、収まれ、収まれ!
好きという気持ちを一生懸命封じ込めた
席に戻る時には何も無い笑顔で
『ごめんなさい、お酒飲みすぎて急な尿意が〜』
「ガールちゃん大丈夫?」
『大丈夫ですよ。漏らしてないです』
笑顔で
笑顔で
「A、わりぃ。俺覚えてなくて」
『はい?』
「2人に聞いた」
『ああ、それはお構いなく。私もお酒飲みたかったので』
大丈夫。普通に話せてる。大丈夫。
正直なところ息が苦しい
「にしても、ガヤさんがこんななるまで飲むなんて珍しいね」
「ん?まあ…」
『お酒に逃げたくなっちゃう日もありますよね〜』
黙っていると不自然だから
なるべく自然なトーンで会話に混ざる
「お客様はそれで頻頻に飲んだくれてたわけですからね」
『ちょ、マスター!私の話はいいので』
「ガールちゃんの飲みっぷり毎回凄かったもんね」
「それでいて、後半は記憶無いらしいですからね」
『2人ともやめてください、恥ずかしいです!』
彼の前で私が飲んだくれてる話はしないで欲しい
「ハハッA酒好きだもんな」
そう笑う彼はいつもの彼で
でもその笑顔は彼女の物なんだと考えるだけで
吐き気がした
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作者名:ゆき | 作成日時:2023年6月18日 18時