甘ったるい彼等④【短編集】(雪男) (ページ14)

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大介 side

『…これ、連絡先じゃん』

「ぇ、」

『なに？貰ってここ入れてんの忘れてた？』

「ちがっ」

『違くないじゃん。はぁ……アイツかぁ』

違う違う、止まれ俺
目の前で小さくなって俯くAを責めたいわけじゃない。

青と緑のリボンで飾られた、男っぽい色味の贈り物
大切な相手がいると分かってるはずなのに手を出そうとしてきた店員(アイツ)に腹が立つ。

だけど怒りを向けるべき相手がここにいなくて、昂った気持ちのままAに言葉を吐いてしまう。

『Aの好きそうなタイプだったもんね、嬉しかった？』

「…なんで、そんなこと言うの」

『だってほんとの＿＿＿、ぁ』

俺の大好きな大きな眼に溢れんばかりの涙を溜めて
きつくこちらを睨み付けるAを見て我に返った。

「やだ、もうそれ返して」

『ちょっ、Aごめんっ』

「いい！今の大ちゃんにあげたくない！捨てる！」

俺から袋を奪って立ち上がると、迷い無くキッチンのゴミ箱へ落としてしまうから焦って拾い上げる。

「触らないでっ」

拾ったそばから取り返そうとしてくるので、背伸びするその体を強く抱き締めた。

「さわんないで！！」

ここまで感情を露にして怒るAを見るのは初めてで、正直どうしていいか分からない。でも、この細い体を離しちゃいけないってことだけは確かだ。

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「触るな！」『やだ！』の攻防をしばらく続けていると疲れてきたのかAの力が弱ってきたから、柿の皮が付いてしまった袋を一旦シンクに置いて腕を引いてソファーに戻った。

隣に腰かけると少し腰を浮かせて距離を取るから胸が苦しい。

『離れないでよ、傷つく…』

「うるさい、私の方が傷ついてる」

もうこのまま二度と目も合わしてくれなくなったらどうしよう…
別れるなんて、一人の家に帰るだなんて、考えたくもない

苦しくて悲しくて、俺がこんな気持ちなるのはほんとにお門違いなのに

『ねぇどこにも行かないで…』

「…え？」

『お願い、A』

もう一度、いかないでと呟くと俺の目から雫がこぼれ落ちた。

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そんとき気付いた
この胸のザラつきは、嫉妬ではなく不安からきていたのだと。

俺に振り向いてくれるまで、Aの隣には店員(アイツ)によく似た男が並んでて、悔しいけどすごくお似合いだと思っていたから。

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