甘ったるい彼等②【短編集】(雪男) (ページ3)

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翔太 side

『はぁ……』

二度寝から起きたら、隣はもぬけの殻でため息が出た。

仕事は夜だけだから一緒に居たかったのにと、ベッドの上で意味もなく携帯をいじっていると、帰宅する音が聞こえてくる

『おかえり…』

「ただいまぁ、おはよ」

『また俺置いてった』

「よく寝てたから起こすの遠慮しちゃった、ごめんね？」

玄関先で毛玉の足を拭いてあげていたAは、「翔太もこだまとお散歩行きたかったんだって」と話しかけながらリビングへ向かってしまう。

そーゆーことじゃない！と伝えるのはあまりにもだとグッと堪えたけれど、ラグの上でお腹をむき出しにして寝転んで、Aにこれでもかと愛でてもらっている毛玉を見るとやっぱりどうにも面白くない。

「ふはっ何してんの」
『俺も毛玉になる』

毛玉の横にゴロンと同じ体勢で寝転んでみせると笑ってスマホを構えるA

「ねぇ、毛玉じゃなくてこだま」

『ふん』

「なぁにもう(笑)」

『撫でて』

「えー？」

『撫でる！』

「とんだ大型犬ですね」と言いつつも、頭をふわふわ撫でてくれるのが気持ちよくて目が細まる

「ほんとにワンコみたい」

調子にのって膝の上に頭を乗っけると、さらに可愛がってくれるから

これはイチャイチャできる雰囲気か？と起き上がろうとした途端、お腹の上に衝撃が走った

『ぅおっ…けだまぁ！』

＜なーに？＞とばかりに首をかしげるから力が抜ける
俺の上で居場所を整え、丸くなってしまった毛玉を可愛い可愛いと何枚も写真に納めるのも面白くない。

「仲良しになったねぇ、いい子」
『俺から歩み寄ったんだよ』

「知ってるよ？だから、翔太がいい子」

膝に乗った頭を抱き抱えてキスをくれるからたまらなくて。

『けだま、ハウス…』

俺の言うことなんていつも半分以上無視するくせに
今日はすんなり腹から降りて自室へ籠りに行った毛玉

「えっちょっ…真っ昼間だよ！？ねぇ、待て！」とキャンキャン
吠えるAを正面から抱っこして寝室へ歩きだす。

『毛玉が気ぃつかってくれたんだよ？無駄にしちゃダメでしょ』
「なにその言い訳」

くふくふ笑い合うのがめちゃくちゃ幸せで
後でとっておきのドッグ缶を開けてやろうと思った。

Fin.