66.糸師家の姉ちゃんの話・前編 ページ19
「ん………………………………」
知らない天井。薬品の匂い。誰かがすすり泣く声。
ここは、一体――――――?
「A…………?」
「……凛」
ターコイズブルーの瞳に涙をためて泣いている凛。
さっき聞こえた声は凛のものだったようだ。
「……おは、よう」
いまだハッキリとしない意識で凛に挨拶をする。
凛は大きく目を見開いて両手を私の背中に回してきた。
「ぐえっ……」
ベッドに体を預けていた私の体が凛によって無理やり起こされる。
「っ…もう、起きてこないかと…っ…」
凛の瞳から涙がぽたぽたとこぼれ落ちる。
私は右手を凛の頭の上にポスッとのせる。
「……ごめんね。心配かけて」
今、倒れる前のことを振り返ると、私は少し焦りすぎだったのかもしれない。
「…………凛をこんなに泣かせて…私、お姉ちゃん失格だ」
ポツリと小言をこぼす。
「違ぇ…っ。悪かったのは俺だ。姉ちゃんが自分を思い詰めてたのに気がつけなかった…っ」
凛の悔しそうな声が病室に響く。
私は凛の頭を撫でながら彼の言葉を聞いた。
「姉ちゃんの手の絆創膏が日に日に増えていくのとか…目のクマがどんどん濃くなっていってるのとか…っ」
「俺は気づけなかった!!!!!」
声を荒らげて悔しがる凛。
私は一度、彼から離れて凛の両肩に手を置く。
「……凛は、悪くないよ」
「は………………………………」
「悪いのは、私なの。私が冴と凛みたいな才能がなかったから。私が努力の仕方も下手くそだから。…だから、凛は悪くないよ」
瞳を揺らしている凛に小さく微笑む。
凛をこんな風に心配させて、泣かせて。
私は本当にお姉ちゃん失格だ。……もっと、頑張らないと。
凛に見えないように布団の下でギュッと拳を握りしめる。
私は努力の仕方を間違えてた。
ただ我武者羅に毎日頑張るだけじゃなくて、改善点とか良かったところとかももっとノートに記して――。
「っ!何にも分かってねぇ!!!!!」
「えっ……」
急に肩を揺らして大声を出した凛にびっくりする。
凛はターコイズブルーの瞳から大粒の涙を流しながら、私を見つめた。
「姉ちゃんに才能がないとか誰も気にしてねぇよ!!それよりも、俺は姉ちゃんが無理してるのが嫌だ…!無理やり笑って、誰にも心配かけないようにして…!なんでそんなに無理するんだよ…!」
「――お願いだから、もう無理しないでくれ……ッ」
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湊(プロフ) - めんちさん» めんちさん、コメントありがとうございます!私もまだまだですので、一緒に頑張りましょ!💪 (6月26日 20時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
めんち - めっちゃ面白いです!私も夢小説かいてるんですけど国語力なさすぎるので湊様みたいに楽しいお話つくりたいです (6月26日 14時) (レス) id: 05dd0f2a4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:湊 | 作成日時:2023年6月26日 9時