8.撫でる話 ページ10
「姉ちゃん、今日一緒に登校すんぞ」
「え」
たった今、制服に着替えた凛にこう言われた。
私はチャックをしめる手を止めて凛を見つめる。
「……姉ちゃんは、俺と学校に行きたくねぇのかよ…」
私が黙っているのを不思議に思ったのか、凛が目を伏せて肩を落とす。私は急いでチャックをしめた。
「違う違う。ただ、私と凛の学校は違うし…一緒に行ってもいいけど、すぐそこで別れるじゃん」
本当にすぐそこだ。家を出て、少し行った先で別れる。
凛と登校出来るのは数分きりだ。たった数分を私と一緒に登校したいほど、凛には何か事情があるのだろうか。
首を傾げて凛を見つめていると、凛は私から目を逸らして口をひらく。
「…姉ちゃんと一分一秒、離れたくない」
小さいころは、冴にそれはもうめちゃくちゃ甘えていた凛だ。大人になってその対象が私に変わっただけ。
私は、コクリと頷いて微笑む。
「…わかった。一緒に行こ」
「…！…うん」
コクリと頷く凛の表情は幼くて、可愛くて、なぜだか無性に彼の頭を撫でてみたくなった。
だけど、今の私の身長は162センチ。それに比べて、凛は180センチ越えだ。身長差が20センチ以上ある時点で私が彼の頭を撫でられないことは確定している。それでも、撫でみたい。
「ぐっ…」
私の行動を不審に思ったのか、凛は可愛く首を傾げる。
…もっと撫でたくなったではないか。
頑張って背伸びをして指が凛の髪に触れる――その瞬間。
「うわっ」
背伸びをしていたからかバランスが崩れて後ろに倒れ込みそうになる。思わず目をつむって痛みが襲ってくるのを静かに待っていた――はずだった。
「あれ…」
ギュッとつむっていた目をゆっくりひらいていく。
目の前には、綺麗な顔立ちをした弟の顔。
「凛…」
「…ったく。姉ちゃんは昔から危なっかしいんだよ」
「ごめん…あと、ありがとう」
凛に支えられていた腕から離れた瞬間、凛が小さくかがむ。
「…？」
「…撫でたかったんだろ」
自分で言ってて恥ずかしくなってきたのか、凛の声が小さくなっていく。私はそんな弟の姿に二度三度まばたきをして、クスッと笑う。
「うん。撫でたかった」
わざわざ屈んでくれた弟の頭をヨシヨシと撫でる。
凛の髪はサラサラで、撫でるたびに指の間を通っていく髪が心地よかった。
「……ん。ありがとう、凛」
「…おう」
顔を私から逸らしながら、凛はそう言う。
見間違えかもしれないけど、私には彼の耳がほんのり赤く染っているように見えた。
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湊(プロフ) - もちうささん» もちうささん、コメントありがとうございます！これからもふたつのルートにご注目ください！ (6月8日 19時) (
レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさ - 凛ルートと凪ルートがありますね！凛君推しなので結婚とか出来なくても事実婚なら出来ますね！ (6月8日 13時) (レス) @page34 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - アルです！\(●°ω°●)/さん» アルです！\(●°ω°●)/さん、コメントありがとうございます！凪は私的にも好きなキャラクターなのでどんどん活躍させていきたいと思っています！ (5月28日 1時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
アルです！\(●°ω°●)/(プロフ) - そういえば糸師兄弟と凪は神奈川県出身だったなぁ…凪登場ありがとうございます！ (5月28日 0時) (レス) @page17 id: f6a6e363df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湊 | 作成日時：2023年5月19日 12時
