43.お花見の話 ページ45
「わぁ…」
辺り一面に、桜の木。
薄ピンクの桜の花びらがヒラヒラと舞っていてとても綺麗だ。
「すごい綺麗だね…」
スマホを操作してパシャリとカメラに桜をおさめていく。
誠士郎くんはというと、先程の真剣な面影など消えてしまって、今は私の肩にもたれかかっている。
「…………んぁ…」
「…誠士郎くんは桜好き?」
何か話をしようと思って目の前の桜の話題を提示する。
すると、誠士郎くんは私の肩からゆっくりと離れた。
彼は私の両肩に手をおいて、そっと微笑む。
「…うん。好きだよ」
「そっ、か」
彼の真剣な雰囲気に驚きながらも、私も微笑んだ。
「…新メニューも考えないとなあ」
店長が先程言っていた新メニューの話を思い出す。
さっき、桜の写真も撮ったしそれを見ながらいろいろとお話しよう。
「……ちょっとは、元気になった?」
ポツリと誠士郎くんが言葉をこぼす。
私は彼のふわふわの髪を撫でながら、微笑んだ。
「…うん。誠士郎くんのおかげで元気になれたよ。ありがとう」
そう言うと、誠士郎くんは真っ白な肌を少しだけ桃色に染めた。何だか、今日の誠士郎くんは表情豊かな気がする。
「…それなら、よかった」
誠士郎くんが安心したように少しだけ笑った。
私たちの間に沈黙が落ちる。
「…そういえば、もう誠士郎くんも高校2年生?」
あたたかい風が私の頬を撫でる。
それを気持ちよく思いながら、彼に話をふった。
誠士郎くんは首を縦に小さく振る。
「…うん」
「そっか。もう、2年生なんだね」
私と彼が出会ったのが、彼が高校1年生の冬。
季節というのは本当に早く過ぎるものだ。
「…ねぇ、A」
誠士郎くんがまた私の肩にもたれかかりながら、小さく口をひらく。
「――連絡先。交換しよーよ」
彼がその言葉を口にした瞬間、それまであたたかかった風が一気に冷えた気がした。
「…れ、んらくさき。か」
震える言葉を必死に紡いで、彼と会話を試みる。
「うん。Aと出会ってしばらく経つし、俺は長期休みが来ないとAと会えないからさ」
「……そう、だね」
彼に不調がバレないように無理やり笑う。
それでも、植え付けられたトラウマというのは簡単にはさってくれないみたいで。
『だから無理やりコイツと連絡をとって…。それなら、俺が今ここで絶ってやるよ』
私の心には凛の言葉が深く根付いていた。
272人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
湊(プロフ) - もちうささん» もちうささん、コメントありがとうございます!これからもふたつのルートにご注目ください! (6月8日 19時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさ - 凛ルートと凪ルートがありますね!凛君推しなので結婚とか出来なくても事実婚なら出来ますね! (6月8日 13時) (レス) @page34 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - アルです!\(●°ω°●)/さん» アルです!\(●°ω°●)/さん、コメントありがとうございます!凪は私的にも好きなキャラクターなのでどんどん活躍させていきたいと思っています! (5月28日 1時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
アルです!\(●°ω°●)/(プロフ) - そういえば糸師兄弟と凪は神奈川県出身だったなぁ…凪登場ありがとうございます! (5月28日 0時) (レス) @page17 id: f6a6e363df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:湊 | 作成日時:2023年5月19日 12時