39.独占欲の話・後編 ページ41
「ねぇ、凛。Aの様子がおかしかったんだけど何か知らない？」
「…知らねぇ」
「そう…」
目の前にいる母さんは「何かあったのかしら…？」と顎に指をそえて考え込む。
俺は母さんに嘘をついた。
姉ちゃんの様子がおかしい理由は俺だ。俺が姉ちゃんを壊した。
自分でも言いすぎた自覚はある。だが、全部本心なのだから仕方がないと思って欲しい。
だって、姉ちゃんが他の男と連絡をとるなんて許せないし、姉ちゃんが俺以外の男のことを考えることも許せない。
「…ほら、Aって1人で抱え込むでしょう？少しは私たちのことも頼って欲しいじゃない？」
困ったような笑顔で母さんが微笑む。
俺はそれを尻目にもくもくとご飯を口にした。
「あの子はきっと甘え方を知らないのよね。お姉ちゃんだからって我慢してる……」
目をふせて母さんはそう言う。
俺は口の中にお茶を含んでゴクンと飲み干してから口をひらく。
「……俺が後で見てくる」
「…えぇ。お願い」
眉を八の字にして母さんはまた笑った。
❁︎
「お母さん、私…今日はご飯いらない」
お母さんにそう伝えて自室へとこもる。
お母さんは「A？何かあったの？」といつも通りの優しい表情で聞いてくれたけど無視してしまった。
後で謝っておかないと。
「……どうすれば、いいのかな」
ベッドの上で膝を抱える。
ベッドのシーツは冷たい。…このまま、私もシーツのシミになって消えてしまいたい。
私はいつ間違えてしまったんだろう。
どこで選択肢を間違えたのだろう。
彼と出かけた時？連絡先を消された時？
――雪の日に傘を差し出してしまった時？
思い当たることが多すぎて頭がぐちゃぐちゃになってきた。
私の頭の中をこんな風にした張本人は呑気にご飯を食べていたし。
「……凛は、何がしたいの」
私と男の連絡先を絶って、それで満足？
凛は私とどうなりたいの？なんでそんなことするの？
凛へと疑問が次々と浮かんでは消えていく。
きっと今の凛に何を聞いても私の納得するような答えはもらえない。
「……じゃあ、私は…？」
ポツリ、と呟く。
私は凛とどうなりたいの？
あの日。10年前の夢を見た日にもっとちゃんと考えておけばこんなことにはならなかったのだろうか。
『――お願いだから、もう無理しないでくれ……ッ』
目を閉じるとまぶたの裏に描かれる私の信じていた凛。
『A。大丈夫だ。俺がお前を守るから』
私の信じていた凛はもういない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 272人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
湊(プロフ) - もちうささん» もちうささん、コメントありがとうございます！これからもふたつのルートにご注目ください！ (6月8日 19時) (
レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさ - 凛ルートと凪ルートがありますね！凛君推しなので結婚とか出来なくても事実婚なら出来ますね！ (6月8日 13時) (レス) @page34 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - アルです！\(●°ω°●)/さん» アルです！\(●°ω°●)/さん、コメントありがとうございます！凪は私的にも好きなキャラクターなのでどんどん活躍させていきたいと思っています！ (5月28日 1時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
アルです！\(●°ω°●)/(プロフ) - そういえば糸師兄弟と凪は神奈川県出身だったなぁ…凪登場ありがとうございます！ (5月28日 0時) (レス) @page17 id: f6a6e363df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：湊 | 作成日時：2023年5月19日 12時
