34.助けられる話 ページ36
「――おい」
「Aから離れろ。屑が」
「り……ん…」
視線だけで人を殺 してしまえそうな凛が私の腕をグイッと力を込めて引っ張る。私の腕は力のままに男たちから逃げ出した。
「…たすけて」
汚物を見つめるような目をしている凛にしがみついて、そう呟いた。
「当たり前だろ」
凛は私の縋りに頷いてから、私をギュッと抱きしめるようにする。
「なになに?俺たちがこの子と先に約束してたんだけど?横取りとかマナーがなってないんじゃない?」
「マナーがなってないのはテメェらの方だろうが」
男たちのチャラチャラした発言に、凛が言い返す。
男たちは凛の禍々しい雰囲気に気圧されながらも、立ち去ることはない。
「そもそも、お前誰だよ?この子と知り合いなわけ?」
ヘラヘラと笑って私を指さす男。
凛は男の指をガッと掴んでそれを力を込めていく。
「ちょ、なんで指つかんで…って、い゛った゛!!」
「二度とAを指さすんじゃねぇ…ッ」
男の指はグリグリと曲がっていく。このままでは折れてしまいそうだ。
私は凛の腕の中から抜け出して、凛の手を掴む。
「やりすぎ…!そこまではしなくていいから!」
そう言うと、凛はパッと男の指から手を離した。
男の指は真っ赤なあとがついていて、弟の馬鹿力を実感した。
「…チッ。二度と視界に入ってくんじゃねぇ、ゴミが」
凛がそう言ったのを最後に、男たちは走って逃げ去った。
私は彼らの背中が見えなくなるまで彼らを見つめて…ため息をついた。
「はぁ…こわかったぁ…」
肩を落としてそう呟く。
人生初ナンパ。トラウマになりそうだ。
「…待たせて、ごめん」
「え?」
凛の口から何か聞こえて、上を向く。
凛は長いまつ毛をふせて俯いていた。
私は背伸びをして、彼の頭をポンポンと撫でる。
今日はヒールを履いているので一応手は届いた。それでも、背伸びしなくては届かないが。
「…姉ちゃん?」
「ありがとう、凛。凛が助けてくれなかったら、私は今頃あの人たちに連れ去られてたと思う。ほんとにありがとう」
ニコッと笑って、彼のサラサラした髪を撫でる。
凛はくすぐったそうに目を細めてから、顔を上げた。
「…これから、どうしよっか」
当初の予定はカフェに行くだけだったのだが、凛がどこかへ行ってしまったことによりいろいろと予定が狂った。
私がひとりでこの後の予定について考えていると、凛が「…んじゃあ」と声を上げた。
「…姉ちゃんに渡したいものがあるんだけど」
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湊(プロフ) - もちうささん» もちうささん、コメントありがとうございます!これからもふたつのルートにご注目ください! (6月8日 19時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさ - 凛ルートと凪ルートがありますね!凛君推しなので結婚とか出来なくても事実婚なら出来ますね! (6月8日 13時) (レス) @page34 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - アルです!\(●°ω°●)/さん» アルです!\(●°ω°●)/さん、コメントありがとうございます!凪は私的にも好きなキャラクターなのでどんどん活躍させていきたいと思っています! (5月28日 1時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
アルです!\(●°ω°●)/(プロフ) - そういえば糸師兄弟と凪は神奈川県出身だったなぁ…凪登場ありがとうございます! (5月28日 0時) (レス) @page17 id: f6a6e363df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:湊 | 作成日時:2023年5月19日 12時