31.出かける話 ページ33
「…でも、ほんとによかったの?」
隣を歩く凛にそう尋ねると、凛はコクリと首を縦に振る。
「姉ちゃんと一緒ならどこでもいい」
「…そう」
それ、彼女とかに言う言葉じゃないのかな…。
凛の発言に疑問を覚えながらも、私たちは歩を進めていく。
今日は凛の合格祝いもあって、前から約束していたお出かけをすることになった。
凛の合格祝いなのだから、凛の好きな場所に行きたかったのだが…。
「…あ、ここ」
目の前のお店を指さす。
凛は私の視線の先をたどって、目的のお店を見つめた。
「ここのスイーツが美味しいみたいでね。前、クラスの子達が話してて…」
「…」
「…凛、スイーツ嫌いだったっけ」
私の話をつまんなさそうに聞く弟にそう尋ねる。
凛は私の言葉に首を横に振って否定を示した。
「嫌いじゃねぇ。好きでもねぇけど」
「そっか。なら、行こ」
凛の腕をグイグイ引っ張ってお店の中へと足を踏み入れる。
お店の中はかわいい女の子やカップルでうまっていて、なんだか気まずい。
「いらっしゃいませ。二名様でよろしいですか?」
「…あ、はい」
店員さんの言葉にコクリと頷くと、店員さんは二名席へと案内してくれた。
凛は私と同じくお店に気まずさを感じているのか、終始無言だった。
❁︎
「うーん。どれがいいかな…」
顎に指を添えて「むむむ…」と声をうならせる。
どのスイーツも美味しそうで迷ってしまう。せっかく、凛もいるのだからどうせなら美味しいやつを2人でシェアしたい。
私は同じようにメニューに目を通している凛に目を移す。
「凛は、何食べるの?」
「…なんでもいい」
そう言う凛にまた頭を悩ませる。
なんでもいいって何…。全国のお母さんの悩みがよく理解出来た。
「…あ」
ふと目に付いたメニューを凛に見せびらかす。
「見て。パンケーキだって。美味しそうじゃない?」
「…お前、これでいいのかよ」
「え?」
凛の言った言葉の意味がわからなくて、首をひねらせる。
凛は「はぁ」とため息をついてからメニューのある部分を指さした。
「…これ。カップル限定って書いてあるぞ」
「……」
フワフワのパンケーキの画像と凛の顔を交互に見つめる。
私達は、姉弟で恋人ではない。だから、パンケーキを食べることが出来ない…。
辛い現実に頭を抱える。私に彼氏がいれば、パンケーキを味わうことが出来たのに。
…そもそも、カップル限定って何よ。
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湊(プロフ) - もちうささん» もちうささん、コメントありがとうございます!これからもふたつのルートにご注目ください! (6月8日 19時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさ - 凛ルートと凪ルートがありますね!凛君推しなので結婚とか出来なくても事実婚なら出来ますね! (6月8日 13時) (レス) @page34 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - アルです!\(●°ω°●)/さん» アルです!\(●°ω°●)/さん、コメントありがとうございます!凪は私的にも好きなキャラクターなのでどんどん活躍させていきたいと思っています! (5月28日 1時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
アルです!\(●°ω°●)/(プロフ) - そういえば糸師兄弟と凪は神奈川県出身だったなぁ…凪登場ありがとうございます! (5月28日 0時) (レス) @page17 id: f6a6e363df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:湊 | 作成日時:2023年5月19日 12時