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28.受験の話 ページ30

「凛、行ってらっしゃい」

「あぁ。行ってくる」

そう言って、凛が家を出たのが数時間前。
もう試験は始まっていて、受験していない私でもドキドキと緊張していた。き

「…ねぇ、お母さん。凛、大丈夫かな?公式ど忘れとかしてないかな?そういえば、シャーペンの芯とかはちゃんと持っていったよね?」

私がそう尋ねるとお母さんは「もう…」とため息をついて微笑む。

「凛なら大丈夫よ。信じて待ちましょ?」

「でも…」

「…あなた達ってほんとに姉弟なのね」

「え?」

お母さんが急に言った言葉に疑問を持つ。
お母さんは私にココアの入ったコップを渡してくる。
私はココアをすすりながら、お母さんの次の言葉を待った。

「Aが高校受験のときも凛、すごく心配してたのよ?あの時はAにもいろいろあったし…」

「あぁ…」

三年前の自分の高校受験を思い出す。
あの時は、受験も心配だったけどそれ以上にいろんなことがあったからなあ。

「…その節はお世話になりました」

「ふふ。でも、あれは気づけなかった私も悪いわね」

「…ううん。お母さんは悪くないよ。私が勝手に空回りして迷惑かけただけだから」

そう呟いてから、あたたかいココアをすする。
甘いココアの味が口の中に広がっていって、私の緊張を解してくれているような気がした。

「…凛が帰ってきたら、何か作ってあげようかな」

「えぇ。それがいいわ。きっと凛も喜んでくれるわよ」

「うん。じゃあ、スーパー行ってこようかな」

「そうね。気をつけてね」

「うん。ありがと」

❁︎

財布とスマホが入っているカバンを持って外へ出る。
早足でスーパーに向かっていると。

「…あ、雨」

服が染みた気がして空を見上げる。
灰色の空からポツポツと水滴が落ちていた。

「早く行かないと」

傘を持っていないことに気がついて、足をもっとはやくしてスーパーへと向かった。

❁︎

「…マジか」

ザーザーとどしゃ降りになっている雨を見つめる。
スーパーに行くまではまだ小雨だったのにスーパーから出て帰路へとつけばこのありさまだ。
傘を差していないまま、家へと帰ったらびしょ濡れ確定だな。
このまま雨が止むのを待つか…いや、それだと凛が帰ってくるのに間に合わない。
どうしようか頭を悩ませていた時、その声はふりかかった。

「…姉ちゃん?」

「あ…」

傘を差して雨をしのいでいる凛が私を怪訝そうに見つめていた。

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(プロフ) - もちうささん» もちうささん、コメントありがとうございます!これからもふたつのルートにご注目ください! (6月8日 19時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさ - 凛ルートと凪ルートがありますね!凛君推しなので結婚とか出来なくても事実婚なら出来ますね! (6月8日 13時) (レス) @page34 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アルです!\(●°ω°●)/さん» アルです!\(●°ω°●)/さん、コメントありがとうございます!凪は私的にも好きなキャラクターなのでどんどん活躍させていきたいと思っています! (5月28日 1時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
アルです!\(●°ω°●)/(プロフ) - そういえば糸師兄弟と凪は神奈川県出身だったなぁ…凪登場ありがとうございます! (5月28日 0時) (レス) @page17 id: f6a6e363df (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年5月19日 12時

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