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13.ホラー映画を見る話 ページ15

「…」

真っ暗になった天井と見つめ合う。
覚醒しきった目を無理やり瞑ればすぐに夢の世界へ――。

「…」

ね む れ な い 。

誰もいない静かな部屋でそう発音する。
キッカケは、特にない。ハッと目が覚めて天井を見やれば急に目が覚醒して寝れなくなったのだ。
さっきから無理やり目を閉じて寝ようとしてみているけれど、一向に眠気がやってくる気配もないし、これはオールコースかなあ…。

どうせ寝れないのであれば、この深夜を満喫してしまおう。ゴソゴソと動いてベッドからおり、部屋を出る。
まずは夜更かしのお供、おやつを取りに――。

「…凛?」

凛の部屋の扉から光が漏れていて、まだ彼が起きていることに気がつく。扉の隙間に手をかけてキョロキョロと凛の姿を探すと、凛はテレビの前でクッションを抱いて何かを見ていた。

「…何見てるんだろう……」

小さな声でそう呟く。
というか、凛も起きていたのか。何だか話し相手が欲しくなって凛の部屋の扉をバンっとひらいた。

「!」

凛は体をビクッと跳ねさせて、ゆっくり私の方へと頭を捻らせる。

「……はぁ、姉ちゃん…かよ…」

「?誰だと思ったの?」

凛の驚いている理由がよく分からなくて頭にハテナマークを浮かべる。凛は安心したようにため息をついてからトントンと自分の隣を叩いた。…ここに座れってこと?
ゆっくりと凛の方へと近づいて凛が何を見ていたか確認する――。

「……ひぃ…っ」

画面の中にはチェーンソー片手に人をギッタギタにきっている人物の姿が映っていた。
開始1秒でもうギブアップだ。耳を両手でふさいで凛の方へと視線を移す。凛の視線は血まみれの人物が映っている画面へと釘付けになっていた。

「っ…」

目をぎゅっと瞑って両耳をふさぐ。
チェーンソーのグルグルした音にもビチャビチャとした血の音にももう耐えられそうにない。
半泣きになりながら、凛へと縋りつく。

「り、凛……一緒に寝てもいい…?」

姉として間違った態度をとってしまったような気もするが、もう今は関係ない。とにかく、この血まみれの画面から逃げたい。だけど誰かと一緒にいないと私が無理。
私の縋りに凛は素直にコクリと頷いてくれた。

「……うん。一緒に寝んぞ」

……もう二度と、眠たくなくても部屋を出ないようにしよう。ホラー映画の餌食となってしまう。
そんなアホなことを考えていた私は、凛が少し笑ったあとに恍惚とした笑みを浮かべていたのに気がつかなかった。

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(プロフ) - もちうささん» もちうささん、コメントありがとうございます!これからもふたつのルートにご注目ください! (6月8日 19時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさ - 凛ルートと凪ルートがありますね!凛君推しなので結婚とか出来なくても事実婚なら出来ますね! (6月8日 13時) (レス) @page34 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アルです!\(●°ω°●)/さん» アルです!\(●°ω°●)/さん、コメントありがとうございます!凪は私的にも好きなキャラクターなのでどんどん活躍させていきたいと思っています! (5月28日 1時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
アルです!\(●°ω°●)/(プロフ) - そういえば糸師兄弟と凪は神奈川県出身だったなぁ…凪登場ありがとうございます! (5月28日 0時) (レス) @page17 id: f6a6e363df (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年5月19日 12時

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