12.電話する話 ページ14
キョロキョロ
右左上下と念入りにヤツがいないことを確認する。
前と後ろもくるりと振り返って、ヤツ――凛がいないことを確認すると手の中でブルブルと振動している電話をとった。
「…もしもし?」
《…今、大丈夫か?》
「うん。大丈夫」
スマホから聞こえてくるのは、つい先週聞いたばかりの弟の声。前よりは幾分か声のトーンが上がった気がする。少しは元気になったのかな。
「…なんかあった?」
《…いや。特に何もない》
「そう?」
それならなんで電話してきたんだろう。
冴の考えてることがよく分からずに話は進んでいく。
《…Aは、なんかあったか?》
「えー…そうだな」
顎に指を添えて「むむむ」と唸る。
今週は何があっただろうか。授業で男子が馬鹿やってたとか…そんなことしかなかったような…。
「……あ、凛に連絡先消された」
《…あ?》
冴のドスの効いた声が聞こえてから、ヤバ、と頭に警報が鳴り響いた。そういえば、つい先週に冴と凛に何かあったんだった。
「そ、そういえば新しい料理に挑戦してみたんだよね…。冴にも早く食べてもらいたいなあ…」
何とか凛から話を逸らしたくて適当に話をふってみる。それでも、冴の意識は凛から逸れなかったみたいで冴の禍々しい雰囲気が電話越しに伝わってくる。
《…アイツと何があった》
「…特に、なんにも…ない、よ」
言葉が途切れ途切れになる。これでは、凛と何かあったと言ってるようなもんだ。
私は今週の凛の行動を振り返る。凛と寝たり、連絡先を消されたり、撫でたり…。
…いやこれ、確実に距離感バグってないか。
「……いや、ちょっと距離感がおかしくなっただけ」
隠し事をするのは下手なので、もう素直に伝えてみた。
《…困ったらすぐに連絡しろよ》
…それ、今の冴には言われたくないんだけどなあ。
その言葉を飲み込んで「うん」と返事をした。
…結局、なんで電話してきたんだろう。
❁
冴side
《じゃあ、またね》
「…あぁ」
ブチッと電話の切れる音がしてスマホの電源をきる。
壁に背中をあずけて天井を仰ぐ。
目を瞑れば脳裏に描かれるのは、俺を受け入れてくれた姉ちゃんの優しい顔。
「……姉ちゃん…A…姉ちゃん…A…」
何度も名前を呟いていると心が落ち着いていく。
時折、考える。俺と姉ちゃんが家族じゃなかったら。
血が繋がっていなかったら……俺は……。
「…A」
願っても叶わないことを、ひたすら願って。
272人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
湊(プロフ) - もちうささん» もちうささん、コメントありがとうございます!これからもふたつのルートにご注目ください! (6月8日 19時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさ - 凛ルートと凪ルートがありますね!凛君推しなので結婚とか出来なくても事実婚なら出来ますね! (6月8日 13時) (レス) @page34 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - アルです!\(●°ω°●)/さん» アルです!\(●°ω°●)/さん、コメントありがとうございます!凪は私的にも好きなキャラクターなのでどんどん活躍させていきたいと思っています! (5月28日 1時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
アルです!\(●°ω°●)/(プロフ) - そういえば糸師兄弟と凪は神奈川県出身だったなぁ…凪登場ありがとうございます! (5月28日 0時) (レス) @page17 id: f6a6e363df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:湊 | 作成日時:2023年5月19日 12時