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第40話 ページ40

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18時を過ぎた頃、Aの家の食卓はハンバーグやらシチューやらで埋め尽くされていた。

父はワインを片手に顔を赤らめながら愉快そうに笑っていた。そんな父を見て呆れたように笑う母もどこか楽しそうだった。毎年恒例のクリスマスパーティーは始まったばかりだった。


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Aの手元にある携帯が震えた。案の定、送り主は昨日茶化してきた友人であった。送られた来た写真には、友人と、彼女の恋人が楽しそうに微笑んでいた。

お幸せに、手短に返信したあとAは満腹感から気を逸らすように息を吐いた。


「あら、雪かしら」


キッチンの方から母の呟く声が聞こえた。黙々とお皿を洗う母の声がどこか弾んで聞こえた。Aも母に誘われるように窓に歩み寄った。


「本当だ」


窓から外の様子を見渡せば、しんしんと降る雪がAの視界を埋めた。初雪だ。空から落ちてきた雪が、庭にある花壇に触れて溶けて消えた。またひとつ、ひとつ。雪が消えていった。


クリスマスイヴなんてなければ、今日はただの休日だ。初雪なんて降らなければ、今日はただの。


初雪が降った。

彼もこの景色を見ているだろうか。彼の事が頭に浮かび、寂寞とした気持ちが押し寄せるのも、きっとこの冬のせいだった。もしくは、この初雪のせいだった。




この初雪が降る中、彼はあの子と肩を寄せあって微笑み合ってるのだろうか。

嫌だなぁ。滑稽な自尊心がA自身に牙を剥いた。


Aは鼻を赤くした越前の姿を容易に思い出せた。雪が降った、初雪だよ。彼なら目を細めて私に微笑むのだろう。

そしたら私も言うのだ、「綺麗だね」と。





それは終わりの始まりだった。


リビングを飛び出したAに母は優しく微笑んでいた。ワインを飲み干した父も、どこか柔らかな表情を浮かべていた。


今の私なら、彼に追いつけるかな。いや、きっと咀嚼して飲み込むことを選択するだろうな。だって、私は自分を嫌いになりたくないから。



赤いマフラーを巻いたAは一歩踏み出した。


金色に染る街が眩しくて、Aは目眩がした。道行く人々の中で白い息を吐いたAがあまりにもマイノリティだった。

どこに行けば越前に会えるのかAには分からなかった。ただ、彼の面影を追い求めて走り出した。心臓の音が煩かった。恋人たちが初雪を見上げて微笑んでいた。


肩に落ちた初雪が溶けた。








「A先輩?」






そうよ、あなたに会いたかったんだ。






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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます‪‪❤︎‬ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました!あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました! (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ!失恋組!初遭遇です!やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます!ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ!』私も失恋した気分になりました! (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:福原 | 作成日時:2021年9月17日 0時

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