第33話 ページ33
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「冬が終わるの寂しい？」
桜の木の下に腰掛けた越前はAの端麗な横顔を見つめながら問いかけた。深い意味は含まれていない、単に純粋な興味だった。
「どうだろう」
Aとしては四季の中で冬は好きな方だった。煌びやかな光に染まっていく街中を眺める時間が嫌いではなかった。
「俺は寂しい、終わって欲しくない」
これは間違いなく越前の本心から来た言葉だった。
迷いのない言葉はAを揺さぶるには十分だった。Aの好きな煌びやかな光は人を寂しくさせた。それは今も昔も変わらなかった。
「私もだよ」
終わって欲しくない、紛れもないAの本心だ。
だがAは知っていた、季節は通り過ぎるからこそ美しいということを。それは桜が散る姿が美しいように。時の流れは留まることを許してくれない、逆らってはいけないのだ。
「…ごめんね」
Aは視線を逸らすことなく、真っ直ぐ越前を見据えた。幹に腰かけた越前は怪訝な表情を浮かべた。冬の寒さが痛かった。
「なにが？」
「ううん、何でもない」
Aはもう一度越前を見据えた後、視線を逸らした。Aの瞳は暮れ出した景色を映し出しているだけで、Aの心情を読み解くことはできなかった。
越前が何度Aに問いかけようと、Aは越前に視線を寄越すことはなかった。越前の縋るような声がAの肩越しに届いていたが、知らないフリをした。
もう二度と、あの寂寞とした海を彼と肩を並べて見ることはない。耳鳴りがした。確証のない約束など、無意味だったのだ。
越前は震えそうな唇を噛み締めて、ぎこちなく笑った。
ケリをつけなければいけないことくらい、Aにも分かっていた。このまま流れていたとして、お互いに得るものは1つもない。無意味に消費できるほど時間は有限ではなかった。
何がこんなにもAを掻き立てしまったのか、今ならよくわかる気がする。結局は触発されて動き始めてしまった愚かな独占欲だった。理性は働いていた、ほら、心は脳にあったんだ。
これで本当に良かった、と平静を装った自分がいたことが何よりの証左になっていた。
それでも越前はAの傍から離れようとはしなかった。何かに藻掻き苦しみ、助けを求めているAに手を差し伸べることの出来ない越前自身の非力さを恨んだ。
そんな越前を知ってか知らずか、Aは何処か穏やかな表情を浮かべていた。
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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます❤︎ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました！あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました！ (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ！失恋組！初遭遇です！やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます！ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ！』私も失恋した気分になりました！ (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2021年9月17日 0時
