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第34話 ページ34

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Aはその足で江ノ島へと向かっていた。帰宅ラッシュの電車内は当たり前に窮屈だった。

アナウンスを背景に、Aは窓から覗く暗い海を見つめていた。何もかも飲み込んでしまいそうな冬の海に少なからず恐怖を抱いていた。



電車を降りて目と鼻の先の海を目指した。

海辺の町は都会よりも体感温度が下がる、Aは赤いマフラーに頬を埋めた。身震いをするAに手を貸してくれる人は誰一人いなかった。



ローファーの音だけが海岸沿いに響く。閑散とした校内とは違う響き方に居心地が悪くなった。波の音だけが聞こえた。




今、情を抱いているだけで、全てを決めることはあまりにもリスキーだった。



今日はそうでも、明日はどうなっているか分からなかった。私たちは、明日を生きることで精一杯なのだから。これが逃げだと言うのなら、甘んじて受け入れる覚悟は出来ていた。


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Aは防波堤に腰かけた。スカートが汚れる事など、気にならなかった。誰もいないことが、Aにとっては救いだった。



そう思っていた瞬間、思い切り右腕を引かれた。



浅はかだった。



女子高生が出かけるには遅い時間だった、Aは失念していた。次に来るであろう痛みに耐えていたが、それは思っていたものとは違っていた。



「危ない!」



藍色の髪の毛を揺らしながら、額に汗を浮かべた青年がAの肩を掴んでいた。


青年があまりにも必死な形相で来るものだから、思わずAは笑ってしまった。青年は怪訝そうな顔を見せた。

暗闇でも分かるくらい綺麗な顔をしている青年にそんな顔をさせてしまった自分が可笑しくて、また笑った。


「ごめんなさい、ただ座ってただけなの」

「ああ、」



自分のために必死になってくれた青年への、せめてもの敬意を示したかったのにAは笑いを収めることが出来なかった。

クスクス、と肩を震わすAに安堵したのか青年はホッと息を吐いていた。


「ありがとうございます」

「俺の早とちりだったみたいで、すみません」



恥ずかしそうに頬をかいた青年を見てAは再度頭を下げた。

きっとこの人は心から優しい人なのだと月並みな言葉ではあるがAはそう思った。


街灯の光がAの頬を照らしていた。




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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます‪‪❤︎‬ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました!あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました! (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ!失恋組!初遭遇です!やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます!ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ!』私も失恋した気分になりました! (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:福原 | 作成日時:2021年9月17日 0時

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