鬼の俺と人間の君が出会えた奇跡【うらたぬき】 (ページ2)

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奇跡が２個ページ2

寒い

何もないこの空間にももう慣れた。
この動くたびに音を鳴らす足かせにも、私を見るたびに殴る管理人にも、何もかも慣れてしまった。

ここは鬼や吸血鬼、異形のものが暮らす世界。
そこで人間の私は生きている。

ここでの人間の扱いはひどい。
家畜以下とされ、異形に売られていく。
売られた後どうなるかなど知ったことではない。
食われるか、それよりももっとひどい思いをするのか……。

昔はそんなことばかり考えていた。
満足に言葉を話すこともできず、話し相手もいないこの檻の中ではそれしかできることはなかった。

けれどもういい。
どうせ私はこの檻の中で命を終える。
生まれて15年間は買い手がいなかった。
だからきっとこれからもいないのだろう。

ごろんっと硬い地面に体を倒す。
ひんやりとした地面に耳をつけていれば、コツコツと足音がして、私は体を強張らせた。

(管理人だ…！)

足音が私の檻の前で止まって、私はぎゅっと手を握る。
今日はどんな痛い思いをするのだろう。
どうすれば早く終わってくれるの。

そんなことを思いながらガタガタと震えていると、管理人の耳障りな声が聞こえた。

「良かったな。お前の買い手がついたぞ」

思っても見なかった言葉にそちらをパッと向けば、そこには茶髪の深緑色の綺麗な瞳を持った美しい鬼が立っていた。