緑のたぬきさんに憧れて歌い手になったら、その人のことをもっともっと好きになりました。【うらたぬき】

たぬきが90匹 ページ46

「まふくん、遅いよ〜」


「うん、ごめんね。それでなんで本城さんの腕握ってるの、luzくん」


「る、すくん……？」


「あ！まふくん、その名前で呼ばないでやぁ」


「本城さんは大丈夫。早くその手離して」


「お、おい、まふ？一回落ち着け」


Iuzと呼ばれた男の人を睨みつけている相川さんを一ノ瀬さんが止める。
そしてluzさんは少し顔を引きつらせながら恐る恐る私の腕から手を離した。


「……こんにちは！本城さん！」


「へ⁉こ、こんにちは、相川さん！一ノ瀬さん！」


切り替えのボタンを押したかのように一変する相川さんに動揺を隠しきれない。
爽やかさんもなのか、切り替えはや、とボソッと言っているのが聞こえた。


「あ、もしかして予約されていたお客さんって」


「あぁ、僕たちだよ！このお店好きだから、2人にも来てもらいたかったんだー。
まさか、本城さんにちょっかい出すとは思わなかったけど」


「だって可愛かったんやもん。まさか、まふくんが言っていた『本城さん』だとは思わなかったけど」


反省の色が見えないが、唇を前に突き出して相川さんに反論するluzさん。
なんだか可愛らしいと思ってしまった。


「あ、まふくん。なんで本城さんなら大丈夫って言ったん？
本城さんは店員さんやろ」


「あぁ、それね」


ちらっと相川さんがこちらを向いた。
何かを言おうとしているが、私にはその真意が分からず、首を傾げていると、相川さんが口を開いた。


「だって彼女、にこちゃんなんだもん」

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