水温（shp） ページ1
まだ秋だというのにほんのり冷たい空気が肌に触れる。夏のころが嘘のように朝は冷え込む。
それのせいで目が覚めた。
顔を洗おうと蛇口を捻れば水道からつぅ、と水が腕に伝わる。
あ、袖が濡れた。
まくっていたはずの布はいつのまにか手首あたりまで落ちてきていた。まあこの服はあまりぴったりとしたものではなく、そこらに放ってあった彼のもので。
サイズからなにからひとまわりほど大きい彼の服はわたしには存外大きかったらしい。
彼は一般の男性よりも小柄だから大丈夫だと思っていたのに。グイッと腕をまくる。
否、まくろうとしたとき後ろから腕が伸びてきた。
「ちゃんとまくって」
頭上から降ってきた声の主を正面の鏡で見てみればどことなくまだ眠たそうだった。
「いや、ちゃんとまくってたんだけどね？」
落ちてきたの、と言えばハイハイと返される。
私の腕を両手で持って水で濡れた袖を丁寧に折りたたんでいく。やはり、腕をまくるのは他人にやってもらうほうがいいみたいだ。
「はい、できた。ていうかこれ俺の服やん」
今更気づいたのか。
世間でいう彼シャツというものだぞ、萌えるだろ、という意味をもった顔で誇らしげに鼻を鳴らせば、その意が伝わったのか顔を抑えて大きなため息をついた。
「そういうの朝から見せられると頭痛い」
それだけ言うと彼はベッドのほうへ戻っていった。数分、その場で立ちすくんでいたのだが、ハッとして蛇口をひねった。キュッと音を立てて蛇口が締まる。
「…もいっかい寝ようかなぁ」
濡れた手をタオルで拭いて、彼の寝ているであろうベッドに向かった。
ぽたりと蛇口に溜まった水が落ちて流れる。
朝の空気のせいで冷やされた水滴は温もりを求めていた。
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鉛筆の芯(プロフ) - マキ*[zm.syp.tn.推し][そらなー.坂田家]さん» はじめまして！コメントありがとうございます！！美味しかったですか！それはよかったです^ ^これからもゆっくりですが更新していきたいと思っているので少しでも楽しんでもらえればと思います (2018年12月21日 19時) (
レス) id: 24995c7de1 (このIDを非表示/違反報告)
マキ*[zm.syp.tn.推し][そらなー.坂田家] - とても良きです！！何回私の心を撃ち抜く気ですか！！甘くて美味しかったです！！←←これからも更新頑張って下さい！！！応援してます！！ (2018年12月20日 22時) (レス) id: aa8519a782 (このIDを非表示/違反報告)
鉛筆の芯(プロフ) - うぃりあむさん» はじめまして！！コメントありがとうございます！！甘めのお話ばかりですが読んでもらえてとても嬉しいです。応援ありがとうございます。これからも少しずつですが更新していきますので楽しみにしてもらえばとおもいます。 (2018年11月3日 22時) (レス) id: 24995c7de1 (このIDを非表示/違反報告)
うぃりあむ(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。どの作品もとても柔らかく甘く可愛らしくて砂糖菓子のようで最高でした！応援しております、更新頑張って下さい！ (2018年11月2日 21時) (レス) id: 6010886135 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：E | 作成日時：2018年10月21日 23時
