【ハイキュー】れもん味【短編集】

【木葉秋紀】《分からないまま.》 ページ37

＊


分からないまま、進めないから。


君を捜すと心に決めた。








君を捜すと心に決めて、早10年。

君と出会った公園も、君と一緒に遊んだ広場にもどこにもいない俺の初恋の人。



名前も知らない、年齢も知らない、住所も知らない、なんにも知らない君を、探してる。






知っているのは透き通るような肌に黒い髪がはえる可愛い女の子ってコトだけで。



分からないまま、進めないから。
今日も君をさがしまわる。



『…俺って馬鹿だな。…10年前の初恋なんてさっさと忘れればいーのに。』


一人呟き、自嘲気味に笑ってマフラーに顔を埋めた。





でも、何故だか忘れられない君とのほんの少しの思い出。


女々しいな。って苦笑してまたさがしだす。



白く染まった吐息。
部活帰りで疲れた体で走る。




ふわり、と黒髪の少女とすれ違った。



目を見開き、振り向けば少女はいない。



―――…あの子だ。


ただ、そう思った。



あぁ、やっと見付けたのに、

唇を噛みしめ周りを見渡す。



「…ねぇ、捜しているのは私？」

ハープのような、可愛らしい声が真横で聞こえた。

驚きつつ、目を向けて思わず笑顔になった。






やっと見付けた初恋の人。


笑って話して、10年ぶりに遊んだ。
名前も聞いた。歳も聞いた。


Aというらしく、歳は同い年。



そのまま話していると、近くから聞きなれた後輩の声がした。



「…？木葉さん。一人で何してるんですか？」









(結局俺は君の事が分からないまま。)


(、名前だけでも。知れて良かった。)





あと、たった一歩が、進めない。

【二口堅治】《聞こえた声.》→←【国見英】《俺にしろよ.》

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す