無一郎くん夢小説あるある【短編集】 (ページ32)

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モブはとことん当て馬にされるページ32

@無一郎

これは……。
僕が思ってたよりずっと…

「キッツ…！Aが他の男と並んでるとこ見るのキッツ…！吐きそう。」

「…いや、想像できただろ。そもそも一度失ってたんだから。」

「そうだけど。まぁキツいけど…全てにおいて勝てる気しかしないな。僕の方が背高いし、僕の方が髪長いし。あと僕はAに嘘つかないしね、ここ重要。」

「髪の長さ関係ある？」

あれから高速バスを降りてすぐのリゾートホテルまで三人で向かい、Aは男と待ち合わせに。

僕たちはというと、すぐに支給されたお仕着せの黒いベストと革靴に着替えて、バイトが始まった。

海が見渡せる広いロビーで宿泊客を対応していれば、駐車場からやってきたAと男の姿。

…Aは別れを告げるつもりなので、ちっとも楽しそうじゃないし…酷だけど少しだけ頑張ってほしい。

「あーあ…僕なら荷物持ってあげるなぁ。うわっ、あのAが階段を手を引かれずに登れるとでも…？いや、手触って欲しくないけど。必ずコケるよあれ……あぁほら、つまずいた。え、あいつAがつまずいたことすら気付かないの…？もう見てられない。」

「……うるさいなー。手引っ張りに行ってやれよじゃあ。」

「不自然でしょ…欧米の接客じゃないんだから。」

フロントに到着したAと視線がぶつかり、控えめに片手を少し上げてくれたのでヒラヒラと手を振ってみせた。

男のチェックインをしているのを傍で眺めていると、ご夕食の確認を…と言ったところで、何やら僕を見てくる兄さん。

申し込み用紙をのぞけば、そこには信じられない予約があったので受付を代わった。

「……蟹のコースでご予約いただいてますが。」

『…あっ、私は甲殻類がアレルギーで…ごめんなさい。』

「そんな大事なことを確認してあげてないのはさすがにありえないのでは？」

「…無一郎。言葉が強い。俺たち、従業員。」

Aに謝りもしない男は、ぶっきらぼうに河豚料理に変更を言いつけてくるので苛立った。

従業員に態度が悪いことより、Aの体のことを気にしてもないことに。

フロントは僕たち以外皆女性で、中年のスタッフがAたちをエレベーターへ誘導しようとしていたので、僕が行きますよ、先輩。と微笑みかけて、宿泊部屋へ案内する権利を得た。

「…あざとい弟力で女性社員を操作するなよ。」

「国民的弟だからね、僕。このくらい余裕かな。ちょっと部屋に案内行ってくる。」

→つづく