無一郎くん夢小説あるある【短編集】 (ページ28)

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モブはとことん当て馬にされるページ28

@無一郎

僕のリュックを一つお腹の前に抱えてるAとエレベーターに揺られる。
こんなに簡単に二人きりになれたのは嬉しい誤算すぎる。

「Aはいつも、故障が起きて狭い密室で僕と閉じ込められるっていうフラグを立てたがってたなぁ。」  

『それ言ってきてたの無一郎だと思うよ…！』 

あ、やっと笑った。

こうして笑ってるAを見ていると、錯覚しそうになる。
離れていた時間なんかなかったみたいだって。
いつまでも繰り返していたかった高校生の僕たちのあの日々の続きみたいだ。

あっという間に八階に運んでくれたエレベーターを降りて808の我が家の鍵をあけて、Aを玄関まであげた。

『わあ…なんだかもう懐かしいよ…いい匂いするよね無一郎の家は。荷物どこに、置こう…か……っうわっ！』

「わっ、大丈夫？…あ、Aもいい匂いするよね？」

ちょっとふらついたAの身体をこうして支えただけで漂う、この空気感。

『いや！？いい匂いしないと思う私は！どんな匂い？！あっ実家ではサボテンの形の芳香剤をおじいちゃんが気に入ってるからそれかな！？というかごめん、腕掴んでくれて、ありがとう…もう大丈夫…！』

「…焦って喋りすぎ。へぇ、Aの匂いはサボテンなんだ。」

いつスイッチが入っても可笑しくない男女の距離感を感じて胸がざわつく。

話すのも怖かったけどこの様子だとAは明らかに今でも、僕と居るだけでドキドキしてるのわかる。

こんなときに加虐心を煽ってくるし。
調子に乗りそうになったけどなんとか抑えた。

「運ぶの手伝ってくれてありがとう。それ、僕の部屋に置いてくれるかな。…お茶でも飲んでく？サボテンの話でも。」

『いや…サボテンはもういいよね…私も無一郎と話したかったから。お邪魔します…』

さすがにAも冗談ばかりじゃなく話したいことはあるよね…

Aは、僕も久しぶりに帰ってきたウチのリビングを通り過ぎて慣れた足取りで僕の部屋のドアノブに手をかけた。

→つづく