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モブはとことん当て馬にされる ページ26

@A




今、付き合っている彼に、「卒業したら結婚を意識して欲しい」と言われた。


無一郎への未練があってもいいという条件で交際を受け入れたし、正直、自分が誰かと結婚するなんて想像もつかない。

戸惑っていれば、とりあえず旅行にでも行こうと、淡路島の旅行に誘われた。


今日は、里帰りしたいと伝えてあったのでそれに合わせて日程を組んで、明日現地で彼と落ち合うことになっている。


帰省するのは他の日でも良かったのに、ひとりで特別な日に浸れれば良いと、わざわざ今日を選んでしまった。


懐かしい通学路。

そこの曲がり角から今にも学生服の無一郎が顔をのぞかせそうだなんて思いながら、鉄井戸と表札を掲げた我が家に到着。



「おかえり、A。荷物はそれだけなのか。」

『おじいちゃんただいま!うん、明日にはまた出るしね。…それ、アルバム?』

「うむ。片付けていたら出てきた。懐かしいじゃろう。」



おじいちゃんが渡してくれた分厚いアルバムをぱらぱらと捲れば、高校の卒業式の写真が目につく。
「卒業式に男子は第二ボタンを好きな子に渡すらしい」と言ってなぜか全てのボタンを私にくれて、学ランの前が全開の無一郎がすごく可愛らしい。


本当に、高校生活のどこを切り取っても、いつだって無一郎が傍に居てくれた。



「わしはな、無一郎がウチに来なくなったことが心から寂しいぞ。」

『…ごめんね。』



あの頃は、慣れない新生活に疲れていたし、無一郎に電話をかければ甘えたような女性の声が聞こえたり、距離がある分すごく不安になった。

喧嘩が続いたころ、無一郎がしばらく連絡をとるのをやめると言ってきた。


そのあとのことは思い出すのもつらい。
遠距離恋愛は私たちに向いてなかった。



「有一郎はたまに帰省して顔を見せてくれるがな。ほら、今みたいなうるさいバイクの音をさせてな…」

『……いや、これ有一郎のバイクの音だ。帰ってきてるのかな?』



外に出て門扉の向こうをのぞくと、有一郎がバイクに乗って、ぶぉんぶぉんバリバリ!と遠ざかって行くのが見えて、向かいのマンションのエントランスで荷物を整えている、その姿を捉えてどくんと胸が跳ねる。





→つづく

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設定タグ:鬼滅の刃 , 時透無一郎   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:まちゃむん | 作成日時:2023年11月21日 19時

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