無一郎くん夢小説あるある【短編集】 (ページ24)

今日:23 hit、昨日:86 hit、合計:16,158 hit

モブはとことん当て馬にされるページ24

・まちゃむんの18↑ちょこちょこ短編集の【四年ぶりに再会した無一郎】のリメイクです。
・なので、設定はまちゃむんの長編【生き全ク①②③】の夢主さんですが、初見で色々分かるように修正してあります。
・夢主さん苗字、鉄井戸です。

@無一郎

これは何の地獄なんだろう。

離れ離れになっていた間にすっかり大人の女性となったAの隣にはタキシード姿で立つ僕の知らない男。
純白の花嫁衣装に身を包む、Aの幸せの瞬間を写真に残すことが今日の僕の仕事らしい。

「…綺麗だなぁ。」

僕がこのドレスを着せてあげられたなら。

腹の中でそう思っていても、あまりにも美しいAの花嫁姿を目の前にすれば口をついて出たのはAが綺麗だという感想だけ。

三脚に固定したカメラのファインダー越しに見えるAの唇が震えていることに気が付いて思わず顔をあげれば、Aはカメラではなく僕をまっすぐに見つめていた。

＊＊＊

地元での就職が決まっていた僕は、夏の終わりからずっと時間を持て余していた。

木々もすっかり紅く色付いて、聞こえてくる冬将軍の足音。
こう肌寒いと大学の友達と遊んだりする活力も無くなってくる。

一人暮らしのアパートで登校日以外をダラダラと過ごしていた僕の様子を知った兄さんが誘ってきたのは、淡路島のリゾートホテルの短期バイトだった。

派遣だから色んな仕事を頼まれる可能性はあるけど、簡単なお仕事らしい。

しかも住み込みで食事付きとのこと。
兄さんとも大学が離れてそれぞれ一人暮らしをしていて寂しかったし、家族旅行気分で引き受け、ホテルまでの中間地点である地元で待ち合わせることにした。

里帰りをすると言えば女が僕の荷造りをしてくれていたが心底どうでもよかった。
付き合う気はないと言っているのに、こうして口実を見つけては彼女面をして入り浸る女性たちに付き纏われることにもうんざりしていた。登校日が終わればさっさとアパートも引き払いたい。

この日に合わせて地元で兄さんとの待ち合わせをしたのは、随分前から今日は絶対に帰省すると決めていたから。

…今日は、Aが前世での僕への気持ちを思い出してくれた記念日。
今を生きる僕たちの恋が始まった日。

Aは覚えているだろうか。
…今日もしAに会えたなら、僕は期待してしまうだろうか。

そうして新幹線の車窓を何時間か眺めるうちに見慣れた構内が見えてきた。

→つづく