急な設定湧きまくって焦る ページ23
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「お疲れ様でした。お連れ様がお待ちです。」
身体がすっぽり入るカプセルの蓋を開けたのは、女性の店員。
すごい体験だったなあ…
時は2088年。
催眠式のシュミレーターが、娯楽として開発されたニュースを見て興味が湧いた私は、今日この施設に遊びに来ていた。
私の興味に付き合ってくれた彼氏の無一郎くんが体を屈めてカプセルを覗き込んでくる。
「A…大丈夫?15分でどんな体験したの?」
『15分だったんだ……すごかったよ、無一郎くんをキスで救ったんだ私。あっ厳密に言えばキスしなくても救えたんだけど。』
「…はい?」
身体を支えて起こしてくれるこの優しい彼氏は
言わずもがな、猫耳もない人間である。
私の頭越しにカプセルの表示を確認している無一郎くん。
「Aはどんな設定にしたのかな…えっ。
隣人愛、強引床ドン、ケモノ耳、悪の組織、雨宿りシチュ……どんな混沌を体験した?欲張りすぎだし。こういう設定はせめて二個ぐらいにしないと。」
確かに欲張りすぎた…
とことん無一郎くんに振り回されてみたくて…
ふぅ、と呆れている無一郎くんにこつんと額を突かれて、はにかむしかなかった。
***
建物を出れば、クリスマス前のイルミネーションが輝く街並み。
寒いねと笑う無一郎くんが、手を繋いだまま自分のポケットに私の手を入れてくれた。
『無一郎くんの手、あったかい。』
「Aの手の方があったかい。」
冬の匂いを吸い込んでは吐き出す横顔が美しくて、学生の時から何年も見ているのに、何度だって見惚れてしまう。
「ご機嫌だね。そんなにシュミレーター楽しかった?」
『…うん。楽しかったけど、やっぱり普通の無一郎くんが、一番だなあ!』
「当たり前でしょ。普通の僕が惚れさせたんだから。」
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高熱の時に見る夢みたいですいませんでした。
お気に入りは、無一郎くんが猫耳をピコらせて立ち上がるところです。
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作者名:まちゃむん | 作成日時:2023年11月21日 19時