他の柱と話しているだけで妬く ページ18
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贈り物をして喜んでくれるのは、嬉しい。
これは誰にでも限らずだけど、あの時透があまりにも自然な笑顔を向けてくれたので、満足感がある。
あんな顔出来るんじゃん、と。
すたすたと先に行く後ろ姿を追っていると、廊下の長椅子にある置き物へなぜか声をかけて診察室へ入って行った。
『あぁ、置き物かと思ったら、座ってる義勇か。』
「俺は置き物じゃない。時透と同じことを言うな。
俺は今落ち込んでいる。そっとしといてくれ。」
義勇が握りしめているものがキラリと光る。
藤の花が溶け出したような、美しい濃紫の入れ物に入ったものをにぎにぎと弄んでいる。
『すごく綺麗な装飾。しのぶによく似合いそうだね。
その形は、口紅かな?』
「そうだろう。俺もそう思ってなんの気なしに買ってきたんだが。意味があると言って、胡蝶が怒っている。口紅を贈るというのはな、君の唇に吸い付きたい、という大人の意味があるらしい。」
『へえ!』
知らなかったそんな意味。
診察室をちらりとのぞくと、なほきよすみの蝶屋敷3人娘から身体の定期検診を受けている時透の後ろ姿が見え、その側で私に気づいたしのぶが廊下にでてきた。
「A。来ていたのですか。あら、冨岡さんもまだ居たのですね。申し訳ありませんが冨岡さんの要求には応えられませんので…」
「違う。俺は邪な気持ちじゃない。色が胡蝶みたいだと思っただけだ。」
『邪な気持ちがあったとしても、コレ、しのぶの瞳みたいですごく綺麗だよ、しのぶ。邪な気持ちがあったとしても。』
「無いと言ってるだろう。泣くぞ。」
しのぶは背中を丸める義勇をじっと見下ろして、呆れた顔をして、そっと口紅を受け取った。
「はあ…意味を知らなかったでしょうから、今回は有り難く頂戴しますね。素敵な装飾なので部屋に飾ります。」
『受け取ってくれて良かったねぇ〜うっうっ…義勇、今後は贈り物には気を付けなぁ?』
「わざとらしいなお前は。ふざけているだろう。」
「A、人のこと言えないのでは?よりによって男性である時透くんに簪を贈るなんて、色々複雑だと思いますが。」
『耳が早いね…時透はすーぐ蟲柱に告げ口するんだなあ。簪にも何か意味が?しのぶは博識だねえ…?』
ふふん、と不敵な笑みを浮かべるしのぶに肩を竦めた。
→つづく
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作者名:まちゃむん | 作成日時:2023年11月21日 19時