清水の雫【マギ】

希望の一手,7 ページ7

◯。◦゜◎



『皇帝陛下、碧です
　御申し付けの通りやって参りました
　お目通りよろしいでしょうか』


静「ああ！
　 入っておくれ」



はっきりとした声が聞こえてくる



『失礼致します

　ここで待ってて』


「「畏まりました」」



一度膝まずき、
ゆっくりと余裕をもって執務室に入る

この話題は早急に
行わなければならないということでしょう
こちらも動揺を見せないように取り繕う

そこにはせっせと山積みになった書類を
片付けている皇帝陛下

皇帝陛下のお好きな紫陽花青と青紫の色で
あしらわれている着物は着崩れしており、
髪も簪を一本しかつけていない

いつもはジャラジャラと身に付けて、
いらっしゃる皇帝陛下がです

ヴェールをめくっていて顔が見えている
綺麗でたくましい顔は、執務で
長時間書物とにらめっこしている為か目に隈ができ、
目を細め、疲れ果てていることが
全面的に分かる顔になっている

最近、問題事が多発しているせいで
今、城は大忙し
下町の強盗被害の件数や
貿易問題は過去一だと言っていた



『こちらが書物です』


静「ああ、そこに座れ」


『畏まりました』



机から少し離れたところにある、
ふわふわとした、羊毛クッションの長椅子を指差す
そこに私は腰掛ける

その間も皇帝陛下は手を止めることなく、
書類に次々と目を通してゆく



静「二日後早朝だ、島に出向き
　 迷宮を攻略しろ

　 ここでもし、死んだのならば
　 君はその程度だ
　 分かったか？」


『ええ、分かりましたよ』



つまり、私を見定めるということ
この迷宮はいわば試験の様です

器となりえるのかという
試験のようなもの、そう言っている

一息つく
生死がかかった試験など
まだ十も超えていない私が
やってもいいのだろか？

皇帝家である為に
と言うならば、
しょうが無いと思った



静「話は以上だ」


『必ず攻略して参ります
　失礼致します』



膝まずきその場を後にする

二日後となると準備の時間が短い
歩いている時間さえ惜しい程に

さらっとなびく髪を耳にかける

執務室を出ると
仕えの者が跪いた



『迷宮行きよ

　自国警備団に連絡し
　選定を行って

　陣形はそちらに任せると
　連絡して頂戴』


揣(すい)「はっ！」



護衛騎士の揣が返事をする
揣の家、翠蓮家は代々我々の護衛騎士をしており、
現当主の翠蓮 琥(すいれん くう)は
皇帝陛下の護衛騎士をしている
現役にしてもう、七十超えらしい

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