第6号 届けたいのはこの想い!-1 ページ43
*
「――じゃあ、そういうことで」
「はい」
ひと気のない夜の編集部、雑然とした空間の一番奥。
それを言葉にした編集長に、私は頷いた。
「少しハードルは高くなっちゃうかもしれないけどね」
「大丈夫ですよ。彼女なら絶対に大丈夫です」
「自信あるね」
「信頼ですよ」
じゃあ、失礼します。そう言いかけた矢先に、「もう一つ」と編集長は付け足した。
その「もう一つ」こそが、私の一歩になる。
*
室橋A27歳。この秋28になるのでそろそろ言い逃れができなくなる私でございますが、――訳あって今ピンチです。
秋山先生との打ち合わせに訪れたファミレス。彼女の姿を見かけて駆け寄ろうとした……のだが、なんと先客がいた。
ゆかりちゃんもとい都先生である。
二人の席の後ろからこっそり盗み聞きするというのも、なかなかスリリングで。……聞き耳を立てて悪いなんて誰も言ってないから、大丈夫だよね!?
「難しいなぁ三回連載……」
まず、聞こえてきたのは秋山先生の声。続けて都先生が励ます声。
「そう言わずに。今はスランプかもしれないですけど、先生なら大丈夫なんじゃないかしら」
「都先生……私今度先生のアシスタントに行きたいです」
「え!?」
何を言ってるんだこの人は。……と、三回連載と言ったね。
実は今回、秋山先生に舞い込んできた報せは三回の短期集中連載の仕事なのだ。
読み切りは基本一話だけど、短期集中になるとそれが一気に三話になる。三話、というのは月刊誌の基本的なパターンだ。ロマンスもそう。
これがうまくいけば連載にもつながるかもしれない、……というのはまだ秘密ね。
「でも、今までずっとテーマにすがりついてたのかなって。白紙から生み出すのは苦手なんです」
「逆に言えば自由にできってことですよ。今こそ秋山ちさとの引き出しを利用すべきでは?」
「いえいえ引き出しなら都先生の方が……」
「いえいえそんなことは……」
相変わらずの謙遜しあい。ここまでくると何かのネタ振りでは、と思って鞄と頼んだコーヒーを持ち、席を立つ。
「あとは過去作からヒントを……」
「今こそ秋山ワールドの広げどきですよ、先生」
「へ、ってわぁっ!? むむむ室橋さん!?」
「実は居ました」
ぺこりと頭を下げると、慌てる秋山先生にいつものことねと寛容な都先生。よくわかっていらっしゃる。
さあ、とカップを机に置いた。
「打ち合わせ、始めましょう」
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 怒らないで委員会会長mAKAさん» 私なんぞが剣さんなんて恐れ多いです……!位置的にはパラスコ星人くらいで充分ですよ。……前野さんに投げたら逆に喜ばれちゃうので、ダメージは与えられそうにないですね……。 (2016年3月18日 21時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - スマトラ島のラフレシアさん» レスありがとうございます!!いや、なんというか作者様って野崎くんにとっての宮前さんみたいな感じなんだなーとしみじみ思ってます。あ、タヌキ拾ってくれてありがとうございました。前野にでも投げときましょう。← (2016年3月18日 18時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - お久しぶりですー!!と、とりあえずタヌキは私がキャッチしておきました(使命感)。小田先生、気付いて頂けたようで嬉しいです!よかった!マイペースですが、よいものをお届けできるよう精進して参ります!! (2016年3月11日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - 新作…!!あ、もう目からタヌキが。内容も流石です!!前作のキャラ(小田先生)もからめてきてて最高です!!ゆっくり頑張ってください!! (2016年3月11日 1時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア - 浪越りいさん» 大変お待たせ致しました……!!すみません。ありがとうございます。私も大好きです。あんまり縛らずに自由且つのんびり進めますので、よろしくお願いしますー! (2016年1月24日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年1月23日 18時