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「――というわけで、ホラー特集の前に編集部で怪談をしましょう!」
「お先に失礼しまーす」
「待って室橋さん」
サラッと逃げようとしたら襟首を掴まれた。無理やり戻される。酷いと思う。
前号の〆切の後、何だかいきなり飲み会となって不思議に思いつつついていくと、やっぱりというかなんというか。
そして無駄にノリがいいのも癪だ。
「宮前くん、今日はタクシーお願いしていいかしら……」
「潰れる気満々かよ」
まったく、とため息をつく隣の宮前くん。
どうしてだかここで機嫌が悪いと思ったら、彼の反対隣は前野くんだった。そりゃあ機嫌悪くもなるわね。
「えーっ、怪談なんかしないでぱーっと飲みましょうよ!」
ただ今日だけは私、前野くんの肩を持ちたい。その通りだ!! 怪談なんかやめちまえ!!
「大丈夫だいじょーぶ、そんなにやたらめったら怖い話なんて皆持ってないから」
「本当にー?」
「じゃとりあえず、カンパーイ!」
何だか流れで押し切られたようだけど、大人しく乾杯、とグラスを合わせる。今日は飲んでやるんだからな……。
ただ。
私の予想に反して、校了後の編集者の「怪談」というのは――なんというか、そう、想像するに易いものだった。
*
*
「単行本作業の時です」
ふっ、と静まった時に、先輩が一人そう切り出した。しんとなって聞き入る皆だけど、私は構わずつまみの枝豆を咀嚼する。
「その時は丁度帯の確認で――いつもはアオリ文句がほとんどなんだけど、推薦文を頂いたのでそれを使うことになったのね」
ごくり、と誰かが唾を飲み込む音がした。ややあって、それは前野くんがビールを飲み干した音だと気付く。
「名前は伏せさせてもらうけど、著名な作家の先生だったから……写真付きで頂いたのだけど、その写真、」
その、写真には。
「…………先生のお名前が間違っていることに、最終段階で気づいたのよ……」
「………………怖いわぁ」
むせるかと思った。
…………え? あの、怖い話って、そういう?
私の動揺はそっちのけで、「じゃあ、はい」とまた一人が手を上げた。視線が集まる。
彼女もまた、神妙に語り始めた。
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 怒らないで委員会会長mAKAさん» 私なんぞが剣さんなんて恐れ多いです……!位置的にはパラスコ星人くらいで充分ですよ。……前野さんに投げたら逆に喜ばれちゃうので、ダメージは与えられそうにないですね……。 (2016年3月18日 21時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - スマトラ島のラフレシアさん» レスありがとうございます!!いや、なんというか作者様って野崎くんにとっての宮前さんみたいな感じなんだなーとしみじみ思ってます。あ、タヌキ拾ってくれてありがとうございました。前野にでも投げときましょう。← (2016年3月18日 18時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - お久しぶりですー!!と、とりあえずタヌキは私がキャッチしておきました(使命感)。小田先生、気付いて頂けたようで嬉しいです!よかった!マイペースですが、よいものをお届けできるよう精進して参ります!! (2016年3月11日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - 新作…!!あ、もう目からタヌキが。内容も流石です!!前作のキャラ(小田先生)もからめてきてて最高です!!ゆっくり頑張ってください!! (2016年3月11日 1時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア - 浪越りいさん» 大変お待たせ致しました……!!すみません。ありがとうございます。私も大好きです。あんまり縛らずに自由且つのんびり進めますので、よろしくお願いしますー! (2016年1月24日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年1月23日 18時