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「……だからさあ淡い恋心が一瞬で瓦解してしまった室橋Aちゃん15歳は、何か失ってしまったものを求めるかのようにフィクションにかじりついた訳よ」
「……あの、流石にもういいっスか」
「駄目駄目。そんでまんまとその世界に恋しちゃった私は――ってもう結構聞いてない?」
え? ホントに聞いてないの宮前くん? と尋ねるも返事はない。黙々と作業している。
私の恋バナなんて最初から興味なかったってことかな。よし、今度飲んだ時もう一回チャレンジしてみよう。勢いで押すよ!
さっき通りがかった後輩くんに、「宮前さんが室橋さんに絡まれてる……」なんて呟かれたけれどその通りだった。
勢いでべらべらと自伝を語った私は、ここが編集部、仕事中なんてことすっかり忘れてた。まあ〆切近くでもないし、空気はいつもより大分緩いのだけれど。
宮前くんが視線だけこちらを向く。
「室橋さんは仕事しなくていいんですか」
「溜めてたのは昨日一気に片付けといたの。今日は秋山先生との打ち合わせと、小田先生の次回ネーム待ちだけ」
「楽そうでいいですね」
「え、何それ僻み?」
ほとんど冗談でそんなことを言ってみるけれど、宮前くんはため息ひとつこぼしただけで特に返答とかはしない。
でも流石に怠け過ぎかな。そう思って、まあ次の打ち合わせでいいアイデアでも出せるようにと、机の上に積み重なった秋山先生の没ネームの山を引っ張ってくる。
近いうちに机の上の整理でもするかなあ、なんて思いながら山を分けた。今回の『ロマンテイック・ワールド』に、前回の『放課後イノベーション』、あとはそのまた前の『告白連鎖!』……。
…………ん?
思わず立ち上がる。周囲の視線を感じた。
いやそんなの気にしてられない。私が今、やるべきことはただ一つ。
ネームを読み返すだけ。
最初のものから順番に、早読みはもったいないとじっくり丁寧に読んでいく。
秋山先生はデジタル原稿だ。ネームの段階からそう。
丸人間でいいと言ったのに、先生はネームからびっちりしっかり描き込む。もっとも、今回はどんどん雑になってきているのだけど。
でも、視える。
「……っ、そうだ、これだ!」
隣の席で、宮前くんが小さくため息を吐いたのを感じながら、私は夢中で秋山先生の電話番号をプッシュした。
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 怒らないで委員会会長mAKAさん» 私なんぞが剣さんなんて恐れ多いです……!位置的にはパラスコ星人くらいで充分ですよ。……前野さんに投げたら逆に喜ばれちゃうので、ダメージは与えられそうにないですね……。 (2016年3月18日 21時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - スマトラ島のラフレシアさん» レスありがとうございます!!いや、なんというか作者様って野崎くんにとっての宮前さんみたいな感じなんだなーとしみじみ思ってます。あ、タヌキ拾ってくれてありがとうございました。前野にでも投げときましょう。← (2016年3月18日 18時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - お久しぶりですー!!と、とりあえずタヌキは私がキャッチしておきました(使命感)。小田先生、気付いて頂けたようで嬉しいです!よかった!マイペースですが、よいものをお届けできるよう精進して参ります!! (2016年3月11日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - 新作…!!あ、もう目からタヌキが。内容も流石です!!前作のキャラ(小田先生)もからめてきてて最高です!!ゆっくり頑張ってください!! (2016年3月11日 1時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア - 浪越りいさん» 大変お待たせ致しました……!!すみません。ありがとうございます。私も大好きです。あんまり縛らずに自由且つのんびり進めますので、よろしくお願いしますー! (2016年1月24日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年1月23日 18時