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*
「"紅"って何ですか」
「あ、ここは『べに』じゃなくて『くれない』です。紅は選ばれし魔女だけが代々受け継ぐ、伝統の魔法ですね」
「それを探す、というのは?」
「継承したと言っても、まだ彼女の紅は未完成なんです。それを補い、足りないものを見つけるためには若い魔法つかい見習いの力が必要、ってことで主人公を見込んで頼むんですけど……」
次です、と言われて二枚綴じの資料をめくる。山場の流れが事細かに書いてあった。
「主人公は紅についてよくわからなくて、自分でも調べてみるんですね。そのときにこんな噂を聞くんです。ここ――」
"紅の後継者は契約の際に禁忌を結ぶ"
「この禁忌が何なのか、それを彼女は聞こうとするんですが――」
秋山先生の説明はまだまだ続く。私が相槌を打つような隙もないくらいに。
生き生きと話す彼女の表情を見て、ふと嬉しさがこみ上げてきた。
今回は秋山ちさとのための『魔法』だ。彼女のための魔法は、彼女が最大限力を発揮するための魔法。
*
「魔法、魔法ねー」
ぶつぶつと呟きながら自分の机に戻る。結果、打ち合わせは当初の予定よりも大分時間がかかってしまった。仕事が山積みだ。
「……あ、宮前くん」
――ふと、意識しないうちに名前を呼んでしまっていた。さっきのアレもあるし、迂闊に声をかけていいのかと一瞬思う。
しかし、どうあがいても隣の席だ。宮前くんは顔を上げると、「お疲れ様です」とそっけなく言った。
「あ、お、お疲れー……」
「打ち合わせだったんですか?」
「う、うん。秋山先生と」
「そっスか」
宮前くんは別にいつもと変わらなくて、じゃあやっぱり給湯室では聞こえていなかったのだろうか。
……いいや、そんなに深く考えなくていい。そうだ。
スッキリした気分になれた。いつもの調子で、何も気にしないで、私はイスを引きながら彼に話しかける。
「次、『魔法』特集でしょ?」
「ああ、はい」
「魔法っていうから秋山先生の独壇場でさ。張り切っててねー……どんな魔法だと思う?」
「どんな、ですか?」
本当はヒントもらいたいんだけど。下心は隠して尋ねると、宮前くんは少し考え込む。
それにしても、今日はやけに話に乗ってくれるなあ。前野くんに優しくしてるならついでに私にも優しくしてくれてるのかな?
なんて考えていると、宮前くんはボソリと呟いた。
「……ケータイが使えなくなる魔法、とかですか」
「何言ってるの宮前くん」
*
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 怒らないで委員会会長mAKAさん» 私なんぞが剣さんなんて恐れ多いです……!位置的にはパラスコ星人くらいで充分ですよ。……前野さんに投げたら逆に喜ばれちゃうので、ダメージは与えられそうにないですね……。 (2016年3月18日 21時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - スマトラ島のラフレシアさん» レスありがとうございます!!いや、なんというか作者様って野崎くんにとっての宮前さんみたいな感じなんだなーとしみじみ思ってます。あ、タヌキ拾ってくれてありがとうございました。前野にでも投げときましょう。← (2016年3月18日 18時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - お久しぶりですー!!と、とりあえずタヌキは私がキャッチしておきました(使命感)。小田先生、気付いて頂けたようで嬉しいです!よかった!マイペースですが、よいものをお届けできるよう精進して参ります!! (2016年3月11日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - 新作…!!あ、もう目からタヌキが。内容も流石です!!前作のキャラ(小田先生)もからめてきてて最高です!!ゆっくり頑張ってください!! (2016年3月11日 1時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア - 浪越りいさん» 大変お待たせ致しました……!!すみません。ありがとうございます。私も大好きです。あんまり縛らずに自由且つのんびり進めますので、よろしくお願いしますー! (2016年1月24日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年1月23日 18時