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「室橋帰りました宮前くん……」
「いちいち報告しなくていいです。……って、何でそんなに疲れてるんですか」
「あ、聞く……?」
いえいいです、と言おうとした宮前くんを遮って、ぐったりと椅子に座りながら私は話した。半ば無理矢理だ。
今回の"魔法"特集、編集長が「魔法、なら秋山先生に描いてもらおうか」と言い出したのが始まり。異例のこととなった。
増刊ってのはだいたい新人が読み切りを載せたり、あとは新人賞の受賞作品が乗ったりするもの。だから連載持ちでない秋山先生にお願いすることなんて普通じゃありえない。……というのが増刊少女ロマンスである。
しかし、今回のテーマは『魔法』。そして忘れられているかもしれないが、秋山先生は今の世代でファンタジーを描かせたらピカイチだ。
というわけでノリにノった秋山先生に強く揺さぶられ、マシンガントークに付き合わされ、意気揚々と先生が帰った頃には私はぐったりしていた。
つまり疲れた。
「宮前くん、私ねよく考えてみればこれまで秋山ちさとの本気に巡り合ってないのよ」
「そうですか」
「今までのネームだって全部通ったわけじゃないしさ。やっぱり秋山ちさとはファンタジーよね」
興味なさそうに見えて結構聞いているのが宮前くんなので、私は遠慮なく(図々しくともいう)話す喋る。私の前に秋山先生を担当していたのは宮前くんだ。
くるくる椅子を回して酔い気味になっていると、呑気な声がした。
「宮前くんー、この資料ってどこに置いておけばいいんだっけー?」
前野くんだった。虚ろな目で見てみたら、彼は色んな資料を抱えていた。
少し見ただけでわかる。あれは副編集長用のだ。まあそれだけだし、宮前くんはスルーしてどうせ前野くんが結局私に尋ねてくるんでしょ。
そうたかをくくっていたら、意外や意外。
「それは副編集長のところです」
「ありがとー!さっすが宮前くんだね!」
…………え?
え? 何今の?宮前くんが親切に教えた? え? たったこれだけのことを?
ふんふふーん、と鼻歌で遠ざかっていく前野くんの背中から、視線を正面に戻して。宮前くんは私に気付く。
「……何でこの世の終わりみたいな顔してるんですか」
「え、宮前くん熱ない? 大丈夫?」
「何言ってるんですか」
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 怒らないで委員会会長mAKAさん» 私なんぞが剣さんなんて恐れ多いです……!位置的にはパラスコ星人くらいで充分ですよ。……前野さんに投げたら逆に喜ばれちゃうので、ダメージは与えられそうにないですね……。 (2016年3月18日 21時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - スマトラ島のラフレシアさん» レスありがとうございます!!いや、なんというか作者様って野崎くんにとっての宮前さんみたいな感じなんだなーとしみじみ思ってます。あ、タヌキ拾ってくれてありがとうございました。前野にでも投げときましょう。← (2016年3月18日 18時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - お久しぶりですー!!と、とりあえずタヌキは私がキャッチしておきました(使命感)。小田先生、気付いて頂けたようで嬉しいです!よかった!マイペースですが、よいものをお届けできるよう精進して参ります!! (2016年3月11日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - 新作…!!あ、もう目からタヌキが。内容も流石です!!前作のキャラ(小田先生)もからめてきてて最高です!!ゆっくり頑張ってください!! (2016年3月11日 1時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア - 浪越りいさん» 大変お待たせ致しました……!!すみません。ありがとうございます。私も大好きです。あんまり縛らずに自由且つのんびり進めますので、よろしくお願いしますー! (2016年1月24日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年1月23日 18時