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笑顔の店員に見送られて店を後にする。
それもそのはず、外へと踏み出した鬱の手には大きめの紙袋が一つ。
決めた途端に店員から離されて財布も出せず、更に荷物まで持たせている現状にAは恐縮しきっていた。
『あの、鬱先生、せめて自分の物は自分で持ちます』
「ん？Aちゃん潔癖症ちゃうやろ？なら持たせてや。これくらい余裕」
『ですが…代金もお支払いしていないのに…』
「気にせんでええよ。グルちゃん持ちやし」
笑う鬱の声に振り返る背中。
目深に被っていた帽子を少しだけ上げ、ちらりとAを視界に入れると穏やかな笑みを浮かべる。
「日頃の感謝の印とでも思ってくれ。お前の時間を拘束しているのは俺だしな」
『そんな、申し訳ないです』
「いやむしろ感謝足りんのちゃう？服代で済まされたら安いもんやろ。ついでに俺にも感謝してええで」
「あ、なら僕も」
「お前達は自分で出せ」
贔屓や！とか、グルちゃんのケチ！、などと野次が飛ぶが、素知らぬ顔をしてまた帽子のツバを元の位置へ戻すグルッペン。
後で返そうと思っていたのに、あんな言い方をされたらそれもできなくなる。
申し訳なさそうにAが礼を述べれば、彼は少しムッとした表情でどうせならもっと喜んでくれた方がいいと口を尖らせた。
その後も鬱主導の下、城下のあちこちを見て回る。
彼のエスコートはスマートで、普段あまり見られない紳士な装いは周囲からも羨望の視線を集めていた。
必ずAに希望を聞き、それに対して具体的に答えられなくても様子を見て汲み取って提案してくれる。
なるほど、これは確かにモテるというのも納得だ。
そんなことを考えながらもついて歩くAの視界に、一件の店が映る。
店頭に並ぶのは目を引くみずみずしくも鮮やかな赤やピンク、黄色に白、そしてそれらを引き立てる緑。
数秒眺めていただけだったが、隣に居る鬱には目ざとく気づかれたようで。
「花、好きなん？」
『…その、まあどちらかと言えばですが』
「そっか。長時間持ち歩くと悪なってまうかもやから、帰りに買って帰ろか」
『…ですが、どこに置いたら…』
「ん？どこでもええよ。自分の部屋でも食堂でも、何なら総統室でもさ。Aちゃんの好きなとこに飾ってええんやで」
Aちゃんの花って知ったら誰も悪いようにはせんやろ。
そう笑う鬱を見上げると、彼は優しげに目を細めてこちらを見下ろす。
「あの城はAちゃんの城でもあるんやで。遠慮なんか水臭いわ」
ふふと再び笑いをこぼす鬱はすぐに前を向いたが、その言葉はAの中でしばらくの間静かに反響していた。
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華凛(プロフ) - 1番最初から読んできましたが、このパートの78話目のgrさんのセリフに思わず胸がきゅんとしました。お体に気をつけて更新してください。楽しみにしてます。 (2019年7月4日 13時) (
レス) id: 1c6f67374d (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - マロウブルーさん» コメントありがとうございます。長いお話ですが気に入っていただけて嬉しいです！まだまだ続きますが、よければ今後もお付き合いいただければ幸いです！ (2018年11月18日 16時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - あぁ…何で綺麗で壮大で素晴らしい話なんでしょうか…あなたが神か…そうか…！いやもう、ずっと憧れです！追い付きたいと思うことすらおこがまし(殴)本当にこの話大好きです！影ながら応援しております…！ (2018年11月17日 23時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - この話が面白いのでシャオロンのファン辞めますさん» コメントありがとうございます。生きがいとまで言っていただけて恐縮です…！更新遅くて申し訳ないですが、今後とも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月15日 20時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
この話が面白いのでシャオロンのファン辞めます - 毎回楽しく読ませてもらっております。ぎすメモとともに私の生きがいです。無理せず毎秒投稿してください！(ネタです。すみません。健康に気をつけてください！更新待ってます！) (2018年9月15日 20時) (レス) id: 8c4421707f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年12月1日 22時
