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僅かな沈黙。
カップとソーサーがかち合う音が妙に響く。
チラリと視線を向けると、グルッペンは落ち着いた様子でAの次の言葉を待っていた。
一つ息を吐き、視線を合わせる。
『…わかりました。お引き受けいたしましょう』
「本当か！？いいんだな！？」
『はい。改めてよろしくお願いいたします』
弾かれたように目を開けて身を乗り出してくるグルッペン。
先程までとの違いに少々驚きつつも頷けば、とても嬉しそうにしていた。
そのままのテンションで立ち上がった男は両手を広げて高らかに声を上げる。
「よし、ならばすぐに出発しよう！部屋の準備はまだできていないが、どうせ来るなら早い方がいい。Aも今日から我々の一員だ！」
『お待ち下さい、さすがに今すぐには行けません』
思わず口を挟めば彼は何故だと唇を尖らせる。
いや、当たり前だろうに。
『いろいろと準備や挨拶もあります。この家の処分もしなくてはなりませんし』
「む、ではいつ頃なら来れる」
『そうですね、早くて一ヶ月後くらいになるかと』
「そんなに待てん」
『これだけ待って下さったのに待てないのですか？』
「…三週間だ。それだけあれば準備もできるだろう」
若干不貞腐れた様子で少し譲歩した彼。
仕方ない、ここはこちらが飲もうと、Aも小さくため息を吐く。
『…わかりました。なんとか三週間で片付けます』
「交渉成立だな。こちらもそれまでに迎える準備を整えておこう」
ニヤリと笑みを浮かべる男に、女も負けじと微笑み返して頭を下げた。
「A外交官が我々に、ですか…」
しばらく経ったある日、一人Aの家に立ち寄った男は感慨深い様子で呟く。
「…正直に言えば、お止めするか私もついていきたいです。A外交官ともっとご一緒に仕事をしたかったので」
『補佐官…』
「でも、あの時おっしゃられたことは忘れていません。大佐とA外交官が築いて下さったものを私達は守って繋げていかなければ。ですから、私はこの地でこれまで以上に頑張ります。A外交官はご自分の信念を大切にされて下さい」
少し寂しそうに微笑む補佐官。
きっと第ニ外交官も同じように言ってくれるだろう。
あとは手紙をくれた各国へも報告しなければ。
その前に彼にもう一つ伝えることがある。
『補佐官、ありがとね』
「いえ、こちらこそありがとうございました。向こうでも毎日ちゃんと休んで下さいね」
誤魔化すように心配する彼は、本当に最後までよく出来た部下だった。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます！ (2019年5月10日 23時) (
レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです！ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ！ (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…！？まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…！お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年5月24日 22時
