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「…さて、トントンとオスマンは退室した。君の部下も散策中だ。つまり君と私の二人きりになった訳だが」
先程より静かになった室内で、それほど大きくもない声でグルッペンが声をかける。
目の前から放たれる威圧感は相変わらず、こちらを見据える視線も鋭いまま。
「些か不用心過ぎるのではないか?A外交官殿」
低音でそう告げたグルッペンは長い脚を組んでニヤリと笑う。
おっと、第二面接が始まったか。
様にはなっているが、わざわざ部下を離しておいて言いたいことはそんなことじゃないだろうに。
そもそも監視カメラの付いている部屋は二人きりとは言わない。
『不用心ですか?申し訳ございませんが仰る意味がよくわかりません、総統閣下』
「君は女性だろう。万が一のこともあるかもしれないぞ」
『フフ、ご冗談を。総統閣下ほどの方なら周りにはもっと素敵な方が大勢いらっしゃるでしょうし、第一貴方様の誠実なお人柄を考えれば万に一つのことなどございませんよ』
残念ながらこの手の話は慣れている。
女性外交官というだけでそういうことを言い出す輩の対応は初期で覚えた。
そして目の前の彼は本気で言っている訳ではないので尚更真面目に取り合う必要もない。
「なるほどな。…では君の命が危険に晒されるとしたらどうだ?」
微かに増した威圧感と僅かな殺気。
気圧される、というのが彼に対して持つべき正しい感情だろう。
ただしそれはA以外の人間の場合だ。
『それこそ無用な心配でしょう。ここで私のような者を拘束したり始末する利点は何一つ無いでしょうし、自身の利用価値についてはそこそこのものだと自負しております。勿論貴方様はそんな野蛮なことをなさるはずがないでしょうから、つまらない戯言として聞き流して下さいね』
にっこりと、冗談の一つでも話すかのようにグルッペンに向かって笑いかける。
こちとらそれなりに場数踏んでるんだ、なめるなよ。
対するグルッペンは一度小さく目を見開くとやがて口元を片手で覆って肩を震わせ始めた。
『…総統閣下?いかがなさいました?』
「ククッ…いやすまない、予想以上の切り返しだ。失礼した、A外交官殿」
そう笑って顔を上げた彼の表情は先程よりも幾分か楽しそうだ。
初めから害する気はなく反応を見たかっただけなのだろう。
そしてどうやらそのお眼鏡には叶ったようだった。
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ゆう - メンバー同士の掛け合いもリアルでテンポよく、話の構成もしっかりしていてとても読み応えがあり面白いです!言葉の選び方や設定まで凄く丁寧で尊敬します。小説として面白く、それでいて『リアル』を崩す事なく描かれていて凄いと思いました。 (2019年8月4日 23時) (レス) id: 7c238edc15 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - もちえもんさん» コメントありがとうございます。沢山のお褒めの言葉、嬉しいです!書きやすい方と掴みきれていない方でどうしても差が出てしまうのですが、なるべくいろんな方と絡めるように頑張ります。 (2017年5月18日 2時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
もちえもん(プロフ) - 恋愛一色ではないのにこんなに好きになった小説は初めてです。メンバーと仲良くなっていく過程が早すぎず、自然で素晴らしいです!キャラが掴めていて、言葉遣いが上手で尊敬します。今後とも楽しみにしておりますm(_ _)m (2017年5月17日 23時) (レス) id: 801b233da8 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 那月さん» コメントありがとうございます。読みやすいですか…!ありがとうございます!話の進みは遅いですがよかったら今後とも見ていただけると嬉しいです。更新も頑張ります! (2017年5月16日 13時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
那月 - 夢主ちゃん苦労人ですね;´`文面もきちんとしていてとても読みやすく、面白いです…!!昔ほど酷くないですが未だにやや男尊女卑の所があるのでそこも共感して読めます。これからどのように夢主ちゃんが戦っていくのかとても気になります。更新頑張ってください(*´-`) (2017年5月16日 3時) (レス) id: 329c4228b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:璃亜 | 作成日時:2017年4月30日 2時