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トントンとオスマン、第二外交官が戻ってきたので本日の外交はお開きとなった。
もう少しゆっくりして行かれては、というオスマンの囁きは丁重に断り、それでも見送りに来た彼には感謝の意を述べて馬車へ乗り込む。
自国へ向けて走り出し、角を曲がってオスマンが見えなくなったところで車内の二人は同時にため息を吐いた。
『…お疲れ』
「…A外交官こそ、お疲れ様です」
結果としては外交は成功し、今後への繋がりもできた。
総統や書記長にも会え、恐らくこちらの存在は覚えてもらえただろう。
しかし疲れた、とにかく疲れた。
最後の方は結局チョコレートの種類を説明しながら甘味談義してたな、とどこか遠い目で思い出しながら目の前の部下を見れば、こちらは何があったのやら、ごっそり生気が吸い取られたような顔をしている。
『…どうだった?』
「庭と図書室を見せてもらいましたが…A外交官のことを聞かれました」
『私?』
「はい。適当にはぐらかそうとしたのですが、その…」
『ああ、いいよ想像ついた。別にたいしたことは話してないでしょ?』
「勿論です。しかしあのオスマン外交官、やりづらいですね…全然読めなくて」
『わかる』
大きく頷いて再びため息。
日頃から癖のようにため息を吐いているが今日は特に多い。
その音で第二外交官が顔を上げた。
「そちらは大丈夫でした?」
『ああ、総統か。…あれは楽しんでるだけ』
「楽しんでる、とは」
『オスマン外交官は目的の為に罠を張ってくるけど、あの人は駆け引きと攻略を楽しむタイプ。だから興味を持ってもらえなかったら…』
「…もらえなかったら?」
言葉を切ったAに第二外交官も固唾を飲む。
彼女は微かに眉間に皺を寄せながら窓の外を眺めていた。
『あっという間に切り捨てられるだろうね』
A達が帰った後、総統室へ戻ってきたグルッペンは先程の書類を機嫌良さそうに眺めていた。
オスマンがその様子に声をかける。
「感想は?」
「ああ、想像以上だ。お前が言うだけのことはある」
「やろ?」
「…説明してもらえるんよな?」
低い声で割り込んできたのは何も聞かされていなかったトントン。
目の前の原因達に問うとその内の一人が宥めるように手を上げた。
「たいしたことやないって。ただグルッペンのお気に入りが増えたって話」
「はあ?」
咎めるような反応に思わずオスマンが肩を震わせる。
当然矛先が向いたグルッペンは数時間ぶりにまた表情を強張らせることになった。
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ゆう - メンバー同士の掛け合いもリアルでテンポよく、話の構成もしっかりしていてとても読み応えがあり面白いです!言葉の選び方や設定まで凄く丁寧で尊敬します。小説として面白く、それでいて『リアル』を崩す事なく描かれていて凄いと思いました。 (2019年8月4日 23時) (レス) id: 7c238edc15 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - もちえもんさん» コメントありがとうございます。沢山のお褒めの言葉、嬉しいです!書きやすい方と掴みきれていない方でどうしても差が出てしまうのですが、なるべくいろんな方と絡めるように頑張ります。 (2017年5月18日 2時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
もちえもん(プロフ) - 恋愛一色ではないのにこんなに好きになった小説は初めてです。メンバーと仲良くなっていく過程が早すぎず、自然で素晴らしいです!キャラが掴めていて、言葉遣いが上手で尊敬します。今後とも楽しみにしておりますm(_ _)m (2017年5月17日 23時) (レス) id: 801b233da8 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 那月さん» コメントありがとうございます。読みやすいですか…!ありがとうございます!話の進みは遅いですがよかったら今後とも見ていただけると嬉しいです。更新も頑張ります! (2017年5月16日 13時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
那月 - 夢主ちゃん苦労人ですね;´`文面もきちんとしていてとても読みやすく、面白いです…!!昔ほど酷くないですが未だにやや男尊女卑の所があるのでそこも共感して読めます。これからどのように夢主ちゃんが戦っていくのかとても気になります。更新頑張ってください(*´-`) (2017年5月16日 3時) (レス) id: 329c4228b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:璃亜 | 作成日時:2017年4月30日 2時