道化の華は笑む (ページ34)

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狂気的な笑みを浮かべ､薄ら嗤いの声を上げる研究員を見詰め､ラネーヴェは緑色の液体が貯蔵された水槽に視線を移し替えた｡

襲い来る激痛に絶望感に浸るアフロディーテの姿から視線を動かそうとせず､ ″ 義姉(おねえ)は ? ″ と小さく切なげに呟き声を上げた｡

「ｯｯ … ひどいこと､いうけど､いまは､ぼくたちがたすからなきゃ､ラネーヴェちゃん ! ｣

「でもｯ｣

「ラネーヴェ ! ! いつだって､みんながたすかるとはかぎらないんだよ ! ｣

「イヤ､はなして … ! ヤダ､義姉(おねえ) ! ｣

鉄製の扉を開閉し､飛び出した研究施設は一瞬にして木っ端微塵の塵へと還り､其処は焔が揺れていた｡
叫喚するラネーヴェの脳裏には､爆発間際に微笑んだアフロディーテの姿が鮮明に映し出されていた｡

″ 愛し妹よ ″

♢♢♢♢♢♢

中級貴族 « 伯爵 » のヘル姉妹誘拐･爆発事件は瞬く間に町に､区内に､壁内に広がった｡
憲兵の尋問を受け終えたラネーヴェは憔悴しており､慰めるアポロンとアルテミスの元にマルコが現れた｡

事件の小夜(よる)であった｡義理と言えども､慕う義姉が己のせいで亡くなった(､､､､､､､､､､)悲しみは深かった｡
涙で頬を濡らし続けるラネーヴェを抱き締めたマルコは ″ ごめん ″ と呟いた｡

「義姉(おねえ)とは､もうあえない … わたしの､｣

「 ″ せい ″ なんかじゃないよ｡ぼくのせきにん(､､､､)だよ｡だから､つぐない(､､､､)として､ぼくがきみをまもる｣

決意を瞳に宿したマルコは､自身の胸元で輝きを放つ苺水晶のループタイを外すと ″ ぼくにまもらせて ″ とラネーヴェの孔雀緑色のワンピースの襟下に滑らせるように装着した｡

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