道化の華は笑む (ページ33)

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大絶叫が響き渡っていた｡彼女､アフロディーテには外傷は無いものの､数多の剣に刺される感覚ばかりは拭えず､恐怖に苛まれていた｡

其の光景を制止する事も出来ず､ ″ 辞めて ″ と涙乍らに言う事しか出来ぬラネーヴェは精神的苦痛を伴い､研究員達は愉しそうに微笑み､まさに〝残虐非道〟な行為を繰り返した｡

「へぇ … 中々の結果ですね｣

「義姉(おねえ)ｯ … ! ! ヤダ､もうやめてよｯ｣

「君は健気ですねぇ｡己の身も危険だと言うのに …
血縁の無い赤の他人(､､､､)を心配する暇があるとは｣

「義姉(おねえ)は､たにんじゃない ! ｣

悲痛なラネーヴェの叫びが木霊し､研究員達は渇いた笑みを浮かべ､哀れな ( 義理の ) 姉妹に同情した｡
幼いラネーヴェは頬を涙で濡らすと ″ 助けて､ ″ と身を捩って枷から逃れようと必死になった｡

途端､扉が強く押し開かれた｡ユニコーンを背にした男達は ″ 憲兵団だ ″ と抵抗した見張りを気絶させた｡
次々に研究員達が捕縛されていく中､瘢の幼い少年がラネーヴェの元へ駆け寄り､枷を外した｡

「きみ､ラネーヴェちゃん … だよね ? ｣

「う､うんｯ｣

「ぼくはマルコ･ボット｡かんりの､むすこだよ｣
※ かんり = 官吏

「 … ひとり､たりない｣

「 ? ､なにが … ｯ､アレ(､､) ､あぶないｯ ! ｣

互いの認識を終えたラネーヴェの呟きに反応したのはマルコで､ ″ ひとり､たりない ″ の言葉の後に捉えたのは ″ アレ(､､) ″ であった｡

即ち〝硝安爆薬〟である｡此処は設備の良い研究施設である為､〝硫酸アンモニウム〟なんて手軽に手に出来る代物だ｡其処に〝鋭感剤〟〝木粉〟があるという事は､である｡

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