道化の華は笑む (ページ31)

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花の咲き乱れる季節〝菜種梅雨(なたねつゆ) 〟と呼称される四月上旬の候は不気味な程､穏やかな時を刻んでいた｡
或る姉妹の掲げる白い傘には､煌めく雨粒が弾くように音を鳴らし､旋律(メロディ)を奏でていた｡

「義姉(おねえ) ､どこにいくのですか … ? ｣

中級貴族 « 伯爵 »
ウォール･ローゼ南区ジナエ町総督令嬢
ーーーラネーヴェ･ヘル

「彼処(あちら)には広大な花畑があるのよ ! 行きましょう ? ｣

中級貴族 « 伯爵 »
ウォール･ローゼ南区ジナエ町総督令嬢
ーーーアフロディーテ･ヘル

白い傘には桜色の花弁が張り付き､アフロディーテは傘を回し､咲く花を摘んだ｡
金盞花は綺麗な盞を象っており､ラネーヴェは其の花の匂いを嗜むと顔を顰め､倒れ込んだ｡

「義姉(おねえ) ､ｯ｣

「抵抗するなよ､お嬢さんよｫ｣

「良いか､お前等 ! 妹の方には傷を付けるな｡丁重に扱え｡じゃなきゃ､首が飛ぶぞ｣

口許には白い布が宛てがわれ､隣にはアフロディーテが眼を閉じ､花畑に沈んでいた｡
ギフテッドであるラネーヴェは〝情報分析〟に優れている為､何かある(､､､､)事は容易に予測出来た｡

♢♢♢♢♢♢

柔らかな寝台に眠るラネーヴェとは違い､緑色の液体の水槽に沈められたアフロディーテは目覚めた｡
異様な状況を素早く察すると､抵抗として ″ ガツン ″ と強く音を鳴らし､硝子を叩いた｡

白衣を着た研究員 ( らしき男達 ) は柔和な笑みを顔に浮かべると ″ こんにちは ″ と挨拶をした｡
水中の筈なのに呼吸する事が出来るアフロディーテは不信感を抱き乍ら､眼を鋭くさせた｡

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