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「 やぁ 、 シガンシナの少年 」
「 あ ? ッ 、 お 、 お前 … 彼の時の 、 ヘル ! ! 」
「 おや 、 覚えていたのだね 」
巨人侵攻によるシガンシナ陥落の話に ( 紅色の ) 花が咲き始めた頃 、 ラネーヴェは少年に声を掛けた 。
少年の酷い憎悪に苛まれた瞳は 、 ラネーヴェの笑顔を捉え 、 記憶を想起させた 。
「 そういえば 、 お前も出身聞かれて無かったよな ? 」
「 私の名は 、 ラネーヴェ ・ ヘル 。 出身はローゼ 南区 ジナエ町さ 」
「 シガンシナの出身じゃないんだな ? 」
少年の向かいの席に座ったラネーヴェはパンを頬張ると 、 微笑を浮かべて ″ 嗚呼 、 そうさ ″ と答えた 。
マルコの悲しげな視線を顬に受け乍ら 、 スープを口に含むと顔を顰めて溜息を吐いた 。
「 私は偶然 、 シガンシナ区に居ただけなのだよ 。 運が悪いとしか言い様の無い地獄だったさ 」
「 そうか … じゃあ 、 巨人も見たのか ? ! 」
「 おい 、 コニー … ! 其の話は 、 」
「 良いのだよ 、 マルコ 。 嗚呼 、 巨人の話だったね ?
悍ましい奴さ 。 矢張り人類は弱者なのだ 、 と悟った 」
微笑を浮かべたラネーヴェは ″ 運が悪い ″ と比喩し 、 少年は訝しげに眉を顰めた 。
興味津々な彼等を制止するマルコを窘め 、 神妙な表情で返すラネーヴェに対し 、 少年は食器を置いた 。
「 俺はそう思わない 。 立体機動装置を駆使出来れば 、 奴等を根絶やしにする事だって 」
「 そんな残酷な事を言わないでおくれよ 」
「 は … ? 」
「 … まぁ 、 良いさ 。 君の志しを否定する心算は毛頭無いんだよ 」
咀嚼を済ませたラネーヴェは肘を付き 、 指を搦めた後顎を乗せ 、 少年の瞳を見詰めた 。
計り知れない憎悪が広がる其の瞳は彼等に理解されぬ意味合いを含んでいた 。
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作者名:花詠 x他1人 | 作成日時:2020年9月18日 18時