懐古 3 ページ6
そんな彼の表情をみるといたたまれなくて、私はその場から逃げ出すことしか出来なかった。
Aちゃん、と後ろから声が聞こえたが、私は振り返らず、ひたすら走っていったとき、場面が切り替わった。
目の前には、頭から血を流して倒れている“彼”と、軍人さんの大きな馬が並んでいる。
彼の身体はあちこち傷だらけで、痛々しい姿になっている。近くにいた人たちに聞くと、“彼”は馬に蹴られて死んでしまったのだという。
夢の中の幼い私は、耐えきれずに膝から崩れ落ちた。
───どうして。どうして今になって、この記憶をまた思い出すの。
鯉登少尉殿に話して、少しは気持ちの整理がついたと思っていたのに。
涙が溢れてきて、止まらない。
気がつくと、いつの間にか私の目の前には、あのときの光景が消えていて、周りには、一面の闇が広がっていた。あたりを見渡しても、誰もいない。ただ私一人だけが、独りぼっちだった。
「A」
嗚咽混じりに泣いていると、光が差し込んできて、不意に誰かに抱きしめられた。暖かくて、優しい光。驚いて顔を上げると、涙の膜でよく見えなかったが、砂色の軍服を身に纏った男性だった。
「A、大丈夫だ。心配ない」
彼はそれだけ言って、私の頭を撫でてくれる。その言葉と手の温もりが、とても心地よく感じた。
「私がお前の側にいる」
その言葉を最後に、私の意識は浮上していった。
「こいと、しょ……い…どの」
「なんだ」
寝起きで掠れた声で名前を呼ぶと、返事があった。
ゆっくりと目を開ければ、こちらを見下ろす鯉登少尉の姿が。
状況を把握するために、まだぼんやりとした頭で辺りを確認する。どうやら、あのままいつの間にか眠ってしまったらしい。鯉登少尉がここにいるということは、朝食の準備ができたということなのだろう。
「随分と魘されていたようだが…悪い夢でも見たのか？」
私の顔を覗き込みながら、彼が尋ねてくる。先程まで見ていた夢の内容を思い返すと、胸の奥がきゅっと締め付けられるように苦しくなった。
しかし、彼に余計なことを話したらいけない気がして、咄嵯に誤魔化すことにした。
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塩わさび(プロフ) - くろわっさんさん» コメントありがとうございます。毎日だなんてとても嬉しいです☺これからも宜しくお願いいたします！ (6月18日 21時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» 何を企んでいるんでしょう…😏😏 (6月18日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
くろわっさん - 最高です😭😭😭💖毎日のように読ませていただいております！！これからも楽しみにしています🙇🏻♀️💖💖 (6月7日 0時) (レス) @page43 id: 046a741a21 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 尾形さん一体何を・・・。てかいつの間にか尾形さんと鯉登さんとの三角関係に！！？？ (6月6日 22時) (レス) @page43 id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» ですね☺共感していただけて嬉しいです💕 (6月6日 12時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2023年5月14日 23時
