血痕 2 ページ27
すると、その時遠くの方でドォオンという爆発音が聞こえた。音の方向からして、鯉登少尉たちが進んだ方向だ。
谷垣さんも気づいたようで、ゆっくりと体を起こす。
一体何があったのだろうか。
不安と焦燥感に駆られながら、じっと彼らが進んだ方向を見つめていると、「A…」とふいに手当てをしていた手を捕まれてた。谷垣さんだ。
「谷垣さん？」
「俺のことはいい。お前のおかげでだいぶ楽になった。それよりも……お前は鯉登少尉たちの元へ向かえ。俺も後から行く」
谷垣さんは私の目を真っ直ぐ見ながら、そう告げた。こんな状態の谷垣さんとスヴェトラーナさんを放っておくなんてできない。
そう言おうとした瞬間、谷垣さんは掴んでいた私の手を握る力を強めた。
「今の爆発もキロランケの仕業に違いない。いくらあの二人でも、危険だ」
谷垣さんは、先程の爆発音をキロランケのものだと確信していた。
確かに、あの時の爆音は尋常じゃ無かったし、谷垣さんをここまで追い詰めた相手なのだから、只者ではないはずだ。
「だから」と谷垣さんは続ける。
「A、行け。鯉登少尉たちを頼む」
その力強い眼差しに、何も言い返せなかった。
そして、谷垣さんは私を安心させるように、優しく頭を撫でてくれた。
その手は温かく、大きく、どこか懐かしさを感じた。
私は小さくうなずくと、立ち上がり、そのまま駆け出した。
────鯉登少尉殿。月島軍曹。どうか無事でいて下さい。
それだけを祈りながら、私はひたすら走った。
しばらく走っていると、前方に人影が見えた。
「月島軍曹ッ！！」
「…A…」
月島軍曹は首から血を流しながら、横たわっていた。力なく私の名前を呼ぶ声は弱々しく、いつもの彼からは想像もつかない姿だった。
慌てて近寄ると、月島軍曹は苦しそうに咳をして、血を吐き出した。
早く治療しなければ、命が危ない。
また手ぬぐいを出そうとしたところで、月島軍曹が「待て」と呟いた。
「この先に鯉登少尉が一人でいる…ッ。恐らくキロランケも……」
月島軍曹は、痛みに耐えながらも必死に伝えようとしてくれている。
「わかりました。月島軍曹はここで休んでいてください。後から谷垣さんがくるはずです」
「あぁ、頼んだぞ……」
月島軍曹はそういうと、静かに瞼を閉じた。月島軍曹の呼吸が安定しているのを確認してから、私は先を急ぐ。
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塩わさび(プロフ) - くろわっさんさん» コメントありがとうございます。毎日だなんてとても嬉しいです☺これからも宜しくお願いいたします！ (6月18日 21時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» 何を企んでいるんでしょう…😏😏 (6月18日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
くろわっさん - 最高です😭😭😭💖毎日のように読ませていただいております！！これからも楽しみにしています🙇🏻♀️💖💖 (6月7日 0時) (レス) @page43 id: 046a741a21 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 尾形さん一体何を・・・。てかいつの間にか尾形さんと鯉登さんとの三角関係に！！？？ (6月6日 22時) (レス) @page43 id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» ですね☺共感していただけて嬉しいです💕 (6月6日 12時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2023年5月14日 23時
