打ち明ける 2 ページ17
「はい」
「……昨日の話だが」
「え？」
「その……なんだ……」
「？」
鯉登少尉は、何かを言いかけては止めを繰り返している。一体、どうしたというのだろう。
「…………好意の、伝え方についてだ」
「……はい。それがどうかしましたか？」
「………」
長い沈黙が流れる。
鯉登少尉は、暫く黙った後、「やっぱり何でもない……」と言って、立ち上がった。
「…そろそろ戻ろう。皆が起きてくる頃だ」
「？はい。わかりました」
鯉登少尉の言葉の意味がわからず、首を傾げつつも、私も立ち上がる。そして、家の方へ体を向けると、「Aッ！！」と後ろから名前を呼ばれた。振り返ると、鯉登少尉が真剣そうな表情をして、口を開いた。
「や……やる」
そう言って彼は顔をそらしながら、私に何かを差し出していた。それは可愛らしい白いリボンがついた、簪だった。驚いていると、鯉登少尉は、更に言葉を続ける。
「ほら…豊原で杉元と眺めていただろう。月島軍曹が、女ならこういう物が好きだと言っていたし……。それで、Aに似合うと思って豊原で購入したんだ。よければ……受け取ってほしい」
「……私に…ですか？」
「そうだ。これが私の…気持ちだ。いつも世話になっている礼も兼ねての、だが…」
鯉登少尉は、緊張しているのだろうか。真っ赤な顔をしながら、少しだけ手が震えているように見える。
鯉登少尉殿は、これを女性へ贈る意味を知った上で、私にくれると言っているのだろうか。
思えば、昨日に言った鯉登少尉が好いているという特徴に、私はとてもよく当てはまるような気もする。
「…Aッ」
緊張した面持ちで、鯉登少尉は私の名前を再度呼んだ。きゅっと唇を噛み締めながら、彼が再び言葉を紡ぐ。
「私は、お前のことが、」
「受け取れません」
「……は？」
鯉登少尉は、ぽかんとした様子のまま固まった。
「ど、ういう…ことだ？」
「そのままの意味です。鯉登少尉殿。この簪は、いただけません」
「値段を気にしているのか？そんなことは関係ない。これは私が勝手に買ったものだ。だから、」
「値段の問題ではありません。この贈り物を受け取ることができないんです」
私は、きっぱりと鯉登少尉に告げた。
本当は、すごく嬉しい。だけど、この気持ちだけは受け取るわけにはいかないのだ。きっと、鯉登少尉殿は、勘違いをしているから。
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塩わさび(プロフ) - くろわっさんさん» コメントありがとうございます。毎日だなんてとても嬉しいです☺これからも宜しくお願いいたします！ (6月18日 21時) (
レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» 何を企んでいるんでしょう…😏😏 (6月18日 21時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
くろわっさん - 最高です😭😭😭💖毎日のように読ませていただいております！！これからも楽しみにしています🙇🏻♀️💖💖 (6月7日 0時) (レス) @page43 id: 046a741a21 (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - 尾形さん一体何を・・・。てかいつの間にか尾形さんと鯉登さんとの三角関係に！！？？ (6月6日 22時) (レス) @page43 id: 656bb5ebbb (このIDを非表示/違反報告)
塩わさび(プロフ) - あもさん» ですね☺共感していただけて嬉しいです💕 (6月6日 12時) (レス) id: bea5a70fe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：塩わさび | 作成日時：2023年5月14日 23時
